「宮カフェ」でのミニ紹介展示
[NEWS Vol.35]
ちょうど一年前の今頃、本プロジェクトでは、受賞作品の実制作――五種の反物を中川染工場で染めては乾かし、仕上がりを入念にチェックしているところでした。その時、プロジェクトに携わった関係者の誰もが、「拓きつつある糧の行く末」のイメージを具体的には思い描けませんでした。と言うよりも、結果をすぐさま業績や商品化に反映させる、あるいは大きなステージで評価されるといった期待は、そもそもプロジェクトの趣旨から外れ、むしろ「地域の人々に何が還元されたかを客観的に省みる」(論集の発行)、「その心の正しい継承を温かく見守る」(その後)ことを、「最も近い将来に起こす・起きる出来事」と考えていたからです。
また、わがまち宇都宮には、「宮の注染」と同様の重さ・深度を持つ「他の大切な糧」が多々あり、それらにも一つずつ目を向け、今回のプロジェクトともつながるかたちで、同じように地道な掘り起こしを進めるのが、地域に根ざす美術館のぶれない使命だと信じています。幸いにも、来る2017年1月8日(日)からは、「宮の注染」でも脚光を浴びた「宮の大谷石」が展覧会
http://ishinomachi2017.jp/
というかたちで始まります。
こうして積み上げていく私たちの活動は今、まさに「その後」のフェーズに入ったところで、当市のアンテナショップ「宮カフェ」さん
http://utsunomiya-miyacafe.com/
から、プロジェクトを「街中で省みる」ミニ展示をしませんか?という嬉しいお申し出をいただき、それが本日から公開されています。私たちの意思をおだやかに伝えるための、ささやかな手づくり展示です。宮カフェには、わがまちの他の糧を見つけたり、このまちの今を感じるヒントに満ちています。
どうぞ気楽にお越しください。予定会期は、11月30日(水)いっぱいとなります。
宮カフェ1F(奥のスペース)にて 本プロジェクトのミニ紹介展示 動画も大写しで上映しています |
宮カフェ1F(奥のスペース)にて 本プロジェクトのミニ紹介展示 受賞五作も実物展示しています |
宮カフェ1F(奥のスペース)にて 本プロジェクトのミニ紹介展示 「宮の涼風」を感じていただければ幸いです |
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[左] 「宮の注染を拓く」のロゴマーク。 アート・ディレクション=木村雅彦(GKグラフィックス)、デザイン=工藤功太(同) [右] 「石の街うつのみや」のロゴマーク。 アート・ディレクション=勝井三雄(勝井デザイン事務所)、デザイン=大六野雄二(エッジ・デザインオフィス) |
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「2016年度グッドデザイン賞受賞展」での紹介
[NEWS Vol.34]
1,229点の受賞作のなかに、本プロジェクトも登場する「2016年度グッドデザイン賞受賞展」が、いよいよ本日から始まります!
会場は「A. 東京ミッドタウン各所」と「B. 渋谷ヒカリエ8/COURT・CUBE」に分かれており、本プロジェクトについては、
A. 東京ミッドタウン
https://www.g-mark.org/gde/2016/midtown_map/
「ミッドタウンタワー4F」にて、「取組み・活動のデザイン」の領域で出展されます。
展覧会名 | 2016年度グッドデザイン賞受賞展 |
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展覧会場 | A. 東京ミッドタウン各所…最新のグッドデザイン賞全受賞デザインを展示 B. 渋谷ヒカリエ8/COURT・CUBE… 特別企画「そなえるデザインプロジェクト」展示 |
展覧会期 | 10月28日(金)~11月3日(木) |
開館時間 | 午前11時~午後8時 ※A.のみ10月28日(金)の初日は午後5時30分から開館、11月3日(木)の最終日は午後5時30分で閉館 |
観覧料 | 1,000円(税込・7日間共通)、中学生以下は無料 ※A.の一部無料、B.は無料 ※港区在住・在勤の方は無料 |
詳細につきましては、下記をご覧ください。
https://www.g-mark.org/gde/2016/about/
ミッドタウンタワー4Fにて 「2016年度グッドデザイン賞受賞展」に 於ける本プロジェクトの紹介 |
ミッドタウンタワー4Fにて 「2016年度グッドデザイン賞受賞展」に於ける本プロジェクトの紹介 |
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「私の選んだ一品2016」展~2016年度グッドデザイン賞審査委員セレクションでの紹介
[NEWS Vol.33]
9月29日に速報としてお知らせした本プロジェクトの「2016年度グッドデザイン賞」受賞ですが、東京で開催中の下記展覧会で紹介されています。
展覧会名 | 東京ミッドタウン・デザインハブ 第61回企画展 「私の選んだ一品2016」展~2016年度グッドデザイン賞審査委員セレクション |
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展覧会場 | 東京ミッドタウン・デザインハブ |
展覧会期 | 9月29日(木)~10月23日(日) |
開館時間 | 午前11時~午後7時 ※10月21日(金)・22日(土)は、開館特別延長(アートナイト)のため、夜10時まで開館 |
観覧料 | 無料 |
詳細につきましては、下記をご覧ください。
http://designhub.jp/exhibitions/2577/
本プロジェクト・チームでも、早速、会場を見て参りました。パネル展示には、本プロジェクトを「一品」として選んで下さった審査委員のお一人である藤崎圭一郎さん(デザイン評論家、編集者)の的確なコメント――「進化する美術館 啓蒙から共創へ」という言葉が付されています。
他の「一品」と「それぞれに対するコメント」にも学ぶところは大きく、啓発的なコメントも多々見受けられますので、今日の社会とデザインの動向やあり方などを知るうえでも、ぜひご高覧いただければ幸いに存じます。
「私の選んだ一品2016」展にて photo by (C)GK Graphics |
「私の選んだ一品2016」展にて photo by (C)GK Graphics |
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「地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~」が「2016年度グッドデザイン賞」を受賞いたしました。
[NEWS Vol.32]
速報!
本日、日本デザイン振興会から公式発表があった通り、宇都宮美術館 平成27年度・館外プロジェクト「地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~」が「2016年度グッドデザイン賞」を受賞いたしました。 また、審査員による「私が選んだ一品」にも選定されたことをお知らせいたします。 ご関係の皆さま、さまざまなかたちでプロジェクトをご支援いただいた多くの方々には、心から御礼を申し上げます。
詳細につきましては、追って本サイトを通じてご報告させていただきますが、まずはグッドデザイン賞の下記リンクをご覧ください。
今後とも、当館の活動にご指導・ご支援を賜りますよう、くれぐれも宜しくお願い申し上げます。
論集『宮の注染を拓く』が刊行となりました。
[NEWS Vol.31]
おかげさまで、一年間に及ぶプロジェクトの総まとめとなる
■論集『地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~』
が無事に刊行となりました。
ご関係の皆さま、さまざまなかたちプロジェクトをご支援いただいた多くの方々には、心から御礼を申し上げます。
これまで何度も記したように、プロジェクトを通じて大切にして来たのは、「命題を創造的に探究・解決する」という意味での「デザインの力」です。
- 明治・大正・昭和戦前から戦後復興・高度成長期に至る「モダン・エイジ」に栄えた「わがまちの地域産業」の調査
- それを育んだ「近代のわがまちの特質」と今日まで残された「まちなかの遺産」の再発見
上記を踏まえた
- いま・これからの地域内外の人々に愛される「宮モダン」の「普遍的なパターン・デザイン」の創出
- それを地域で継承されてきた「注染」の技法によって「ゆかた用の試作反物」として実制作
は、すべてデザインの力で括られる活動と捉え、展開して参りました。あわせて、
- 「共創の思想と機会を分かち合う」こと
も重視し、地域の人々、ものづくりの現場、大学、デザイン・チーム、並びに美術館が協働を重ねています。
だからこそ最終的には、わがまちの文化や訴求力に対する認識の深化と高揚、その共有に至ることができたと言えるでしょう。
本論集には、このようなプロジェクトの精髄が凝縮されています。詳細は下記をご覧ください。
■問い合わせ…宇都宮美術館 TEL.028-643-0100(代)
■販売…宇都宮美術館ミュージアム・ショップ
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 論集の発行 |
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 論集の発行pp.04-05より |
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内容
[表紙・前付]
- 表紙
- 市民参加プログラム一覧|凡例|謝辞
- はじめに――伝統と現代を結ぶ「宮モダン」
谷 新(宇都宮美術館 館長) - 宮の注染を拓く――その全体趣旨について
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[エッセイ篇]
- 地域デザインにおける共創のかたち
木村雅彦(GKグラフィックス取締役、デザイナー) - 石のまち、染めに彩られる
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員) - 布からみた染工場の空間 ~中川染工場のフローチャート~
安森亮雄(宇都宮大学准教授) - 宮の注染を育んだ川とまち ~宇都宮 川とまちのガイドマップ~
福沢潤哉(宇都宮大学 安森亮雄研究室) - 子どものためのデザイン教育と地域の産業・文化
梶原良成(宇都宮大学教授) - 宮のデザインを子どもたちに伝える
二階堂桜子(宇都宮大学 梶原良成研究室)
[技法・素材篇]
- 注染の生産工程
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員) - 木綿白生地
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員) - 長板中形の伝統
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員) - 伊勢型紙の伝統
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[市民参加プログラム篇]
- 学ぶ講座――宮の注染とデザインの力を学ぶ
・「宮の注染を拓く」プロジェクトへの招待状
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
・学ぶ講座から始めた意味について
木村雅彦(GKグラフィックス取締役、デザイナー) - 見る・知るワークショップ――田川と染めのまちを探訪する
・温故知新・川を温ねて街を知る
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
・まち歩きのグループ・リーダーを務めて
柳 紘司(宇都宮大学 安森亮雄研究室) - 考える・手を動かすワークショップ――このまちにパターン・デザインを見つける
・デザインのエッセンスに触れたワークショップ
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
・公開ワークショップの講師を務めて
武村里佳(GKグラフィックス、デザイナー) - 見る・知るワークショップ――注染の生産現場を体験する
・ものづくりの現場に惹かれる理由と意味
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
・暑い日の熱い思い出
中川ふみ(中川染工場専務取締役) - パターン・デザイン公募ウィークス&説明会――これからの宮モダンを見つける
・わがまち発・社会に問いかけたデザイン公募
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員) - 公開審査会――このまちに宮モダンを見つけて
・パターン・デザイン公募の審査委員長を務めて
木村雅彦(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
・宮の注染大賞「大谷石採掘の痕跡」
阿久津幸生(応募原稿)
・准大賞(審査委員長・木村雅彦賞)「大谷石の石屋根」
坂本 明(応募原稿)
・安森亮雄賞(審査員賞)「宮ドット」
横山伊織(応募原稿)
・梶原良成賞(審査員賞)「きぶなのぼり」
佐々木晴美(応募原稿)
・宇都宮美術館賞「田川の水面のきらめき」
大庭 亨(応募原稿)
・審査結果の分析
・「原稿シート」に記されたコンセプト+「作画シート」で示されたスケッチの内容分析 - うつのみやの《もよう》を見つけ、かたちにしてみよう
・デザインを学ぶ・教えるということ
橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
・子ども向けワークショップの視点と素晴らしさ
福田裕也(宇都宮大学 梶原良成研究室) - 宮の注染を拓く
・布と共振する空間体験
安森亮雄(宇都宮大学准教授) - 宮の注染を拓いて
・まとめシンポジウムのパネリストを務めて
梶原良成(宇都宮大学教授)
・館外企画展 出品作品リスト
[奥付・裏表紙]
- 広報物とアート・ディレクション――リーフレットのデザインについて
工藤功太(GKグラフィックス、デザイナー) - 奥付
- 裏表紙
館外企画展「宮の注染を拓く」の終了
[NEWS Vol.30]
おかげさまで昨日、館外企画展「宮の注染を拓く」が無事に終了いたしました。12日間の会期で、来場者数は632人でした。
ご来場いただいた皆さま、本展の実現のために無尽蔵のご助力をいただいた関係各位、プロジェクト全般を応援して下さった既知・未知の方々、そして何よりも「宮の注染」の揺りかごである「わがまち」のすべての人々に、心から御礼を申し上げます。
これをもって、全9件の「市民プログラム」は終了しましたが、以降、コア・メンバーとスタッフは、鋭意『論集』の執筆・編集に注力いたします。
本サイトについては、2016年3月末日まで更新を続け、編集の進捗状況のみならず、これまで ・これからの調査研究の成果、プロジェクトに関わる「こぼれ話」「振り返り記事」などを掲載して参りますので、引き続き宜しくお願い申し上げます。
館外企画展「宮の注染を拓く」 展覧会場より(1) |
館外企画展「宮の注染を拓く」 展覧会場より(2) |
館外企画展「宮の注染を拓く」 展覧会場より(3) |
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画像の説明
■館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より(1)
受賞5作品の反物に朝日が降り注ぐ光景も、ついに今日限りとなりました。
■館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より(2)
好評を博したスライド・ショー 「中川染工場の注染」は、本サイトで全編を公開します。
■館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より(3)
クロージングの瞬間――作品は所蔵者の元へ帰り、建物は暫しの休息に入ります。
まとめシンポジウムとパターン・デザイン公募の授賞式の開催
[NEWS Vol.29]
担当学芸員が中川染工場さんへ年末のご挨拶に伺ったのが、昨年の12月25日。雲一つない快晴の冬日でした。天高く聳える櫓には純白の生地が寒風に佇み、新しい事業の成功とまちの人々への還元を祈念して、最初のシャッターが切られました。その記念すべき一枚こそが、本サイトのトップページを飾る「青空と櫓」です。
それから約一年を経た12月6日(日)の午後、同じような潔い青空の下、
■まとめシンポジウム
■パターン・デザイン公募の授賞式
が宇都宮大学UUプラザ2階コミュニティ・フロアにて開催されました。
参加者数は60名、進行は以下の通りでした。
[パネリスト] 木村雅彦氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、安森亮雄氏(宇都宮大学工学部准教授)、梶原良成氏(同・教育学部教授)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[ゲスト] 中川ふみ氏(中川染工場専務取締役)、阿久津幸生さん(「宮の注染大賞」受賞者)、横山伊織さん(「安森亮雄賞[審査員賞]受賞者)、佐々木晴美さん(「梶原良成賞[審査員賞]受賞者)、大庭 亨さん(「宇都宮美術館賞」受賞者)、江連房子さん(「佳作」受賞者)、大上一重さん(同)、鈴木有希子さん(同)
[スタッフ] GKグラフィックス 所員2名、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生2名、同・教育学部 梶原研究室大学生4名
■14:00~15:30
- 主催者とアート・ディレクターによる挨拶
- 全ての市民プログラムをスライドで振り返り、ゲストや会場の参加者へもマイクを向けるフリー・トーク
■15:40~16:10
- 授賞式
- 宇都宮美術館 館長・谷 新によるまとめの言葉
和やかなムードのなか、多くの方々からいただいた多彩で貴重なコメント、この場にお集まりいただいた皆さんの笑顔は、「地域の人々とともに、デザインの力によって、わがまちの糧を再発見・再生する」というプロジェクトの趣旨が根を下ろしたことの証に他なりません。
20世紀のデザインと産業は、常に「地域性 VS 国際性」という対立構造によって語られ、それを前提として「モダン」「普遍性」が追求されて来ました。その行き詰まりを本格的に乗り越えねばならない21世紀にあって、しなやかに・豊かに・地に足の着いたかたちで「問題解決のデザイン」を探った本プロジェクトは、ささやかなながらも本物の「宮モダン」「宇都宮の普遍的な文化」を拓いた、と私たちは信じています。
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 まとめシンポジウム+授賞式の様子(1) |
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 まとめシンポジウム+授賞式の様子(2) |
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 まとめシンポジウム+授賞式の様子(3) |
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館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 まとめシンポジウム+授賞式の様子(4) |
館外プロジェクト「宮の注染を拓く」 まとめシンポジウム+授賞式の様子(5) |
画像の説明
■まとめシンポジウム+授賞式の様子(1)
当日の朝、峰ヶ丘講堂の前で。
■まとめシンポジウム+授賞式の様子(2)
第1部 シンポジウム…担当学芸員とアート・ディレクターのダブル司会で、市民プログラムをひとつ一つ振り返りました。
■まとめシンポジウム+授賞式の様子(3)
第2部 授賞式…宇都宮美術館 館長・谷 新(右)から、副賞品の反物を授与される「宮の注染大賞」受賞者の阿久津幸生さん(左)。
■まとめシンポジウム+授賞式の様子(4)
記念撮影…左から大上一重さん(「佳作」受賞者)、大庭 亨さん(「宇都宮美術館賞」受賞者)、江連房子さん(「佳作」受賞者)、佐々木晴美さん(「梶原良成賞[審査員賞]受賞者)、鈴木有希子さん(「佳作」受賞者)、横山伊織さん(「安森亮雄賞[審査員賞]受賞者)、阿久津幸生さん(「宮の注染大賞」受賞者)。
■まとめシンポジウム+授賞式の様子(5)
左上…シンポジウムのゲスト
中央…シンポジウムのパネリスト
右下…授賞式の受賞者
第1回 ギャラリー・トークの開催
[NEWS Vol.28]
峰ヶ丘講堂から遠望する男体山が雪化粧となった12月5日(土)の午後、館外企画展「宮の注染を拓く」の第1回 ギャラリー・トークが開催されました。
内容は、担当学芸員による
■三つのゾーン(歴史篇・技法篇・プロジェクト篇)の詳しい説明
■型紙の材料である渋紙、受賞5作品を切った手拭い、綿花を来場者に触れていただきながらの解説
でした。
近代の型染め、明治・大正・昭和に於ける図案の傾向、注染をめぐる素材と技法の特質、本プロジェクトの目指すところ、その成果、そして峰ヶ丘講堂について、凡そ1時間に及ぶフロア・レクチャーは、展覧会をご観覧いただくための一助となったでしょうか。
来る12月12日(土)には、
●第2回 ギャラリー・トーク
が行われますので、ぜひお運びくださいますよう!
館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より 第1回 ギャラリー・トークの様子(1) |
館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より 第1回 ギャラリー・トークの様子(2) |
館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より 第1回 ギャラリー・トークの様子(3) |
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画像の説明
■エントランスのタイトル
渋紙を貼ったエントランスは、向かって左側にタイトルと開催情報、右側は注染の道具をモティーフとする切り抜きインスタレーションのなかに、挨拶・謝辞を掲載しています。
■第1回 ギャラリー・トークの様子(1)
担当学芸員は、もちろん和装で熱弁を奮います。さすがに注染浴衣の季節ではないので、帯を絞り染めとしました。
■第1回 ギャラリー・トークの様子(2)
渋紙の匂いを嗅ぎながらトークに耳を傾ける来場者の眼差しは、真剣そのものです。
■第1回 ギャラリー・トークの様子(3)
受賞作の一つを手に取って、注染の特質を学ぶ来場者。紙に出力によるパターン・デザインと、実際に染めた布の比較をなさっているようです。
館外企画展「宮の注染を拓く」のオープン
[NEWS Vol.27]
おかげさまで昨日(12月1日)から、館外企画展「宮の注染を拓く」が無事にオープンとなり、パターン・デザインの原画公募で受賞した5作品の反物も公開となりました。
会場エントランスには、注染を始めとする日本の型染めに無くてはならない型紙の素材「渋紙」を用いたタイトルが掲げられ、これを潜ると、向かって右手に「第一部・歴史篇」、中央に「第二部・技法篇」、そして左側に「第三部・プロジェクト篇」が広がります。順路は「歴史→技法→プロジェクト」ですが、三つのセクションが相互につながっており、どこから見ても満足できるよう設えています。正 面奥のクラシックな舞台ではスライド・ショー「中川染工場の注染」を上映、その冒頭は、本サイトのトップページでもご覧いただけます。
多くの方々の「共創」によって誕生した受賞5作については、それぞれのパターン・デザイン、型紙、反物(手拭いサイズ)を展示しているほか、二階コリドールから横に渡し、注染反物が干される風景を会場内に創出しました。
個々の作品や展示デザインは、サイトを通じて詳しく紹介いたしますので、どうぞご期待ください。
館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より エントランスのタイトル |
館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場 より エントランスからの全望 |
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館外企画展「宮の注染を拓く」展覧会場より 展示室奥からの全望 |
受賞5作のパターン・デザイン |
画像の説明
■エントランスのタイトル
渋紙を貼ったエントランスは、向かって左側にタイトルと開催情報、右側は注染の道具をモティーフとする切り抜きインスタレーションのなかに、挨拶・謝辞を掲載しています。
■エントランスからの全望
歴史的建造物と展示内容・方法が見事に調和しています。天井に渡された反物は、もちろん「受賞5作」に他なりません。
■展示室奥からの全望
注染の道具が並ぶ「第二部・技法篇」を中心に、「 歴史」と「プロジェクト」のつながりも明確になっています。
■受賞5作のパターン・デザイン
(最左) 阿久津幸生[原画] 注染浴衣パターン「大谷石採掘の痕跡」 ※宮の注染大賞受賞作
(左中) 坂本 明[原画] 注染浴衣パターン「大谷石の石屋根」 ※準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)受賞作
(中央) 横山伊織[原画] 注染浴衣パターン「宮ドット」 ※安森亮雄賞(審査員賞)受賞作
(右中) 佐々木晴美[原画] 注染浴衣パターン「きぶなのぼり」 ※梶原良成賞(審査員賞)受賞作
(最右) 大庭 亨[原画] 注染浴衣パターン「田川の水面のきらめき」 ※宇都宮美術館賞受賞作
担当学芸員の取材ノートから――染料のお話
[LEARNING Vol.24]
昨日11月26日(木)の午後、去る9月に行われたデザイン公募の受賞作5点によるオリジナルの浴衣地反物すべて、そして1作による「注染の制作工程を示す展示物」が美術館へ搬入されました。
パターン・デザイン化から型紙の制作、試し染めと細かな調整、本染めまで、およそ一ヶ月半の入念な仕事でした。中川染工場さんの全面的なご協力により、どの作品に関しても、糊の伸びや付き具合、柄の出方、発色と抜染の上がりは申し分ありません。
今日は、その現場をつぶさに取材した担当学芸員のノートから、染料にまつわるお話を紹介しましょう。
これまで何度か記して来たように、注染は「近代の型染 め」です。よって染料も、19世紀後半以降に発明された化学(合成)染料を用い、注染が考案された明治時代はドイツから輸入された染料(1910年代の化学染料はドイツのシェアが80%)が主体でした。大正年間になると、国産品が開発され、昭和戦前には、政府の補助もあって(原料が火薬と同じため)、わが国の染料工業は躍進的に伸びます。注染の第一黄金時代が「綿統制(1938年)が始まるまでの昭和戦前」だったのは、こうした理由もあるのです。
ちなみに今回のプロジェクトで生み出された作品は、近世以前の「天然藍」に取って代わった「化学の濃いブルー」あり、鮮やかな赤や黄の染め分けあり、そして漂白剤を注いで柄を浮かび上がらせる抜染ありと、その始まりから「近代の色」を標榜した注染らしさを 体現するものが揃いました。――展覧会場のオープン、並びに本サイトを通じた12月1日の全柄公開を、どうぞお楽しみに!
注意喚起! 中川染工場の中庭にて |
染料の調合 中川染工場の紺屋にて |
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発色を確認する 中川染工場の紺屋にて |
染料の湯煎 中川染工場の紺屋にて |
画像の説明
■注意喚起!
これから染める白生地や、染め上がった浴衣地のなかで、ひときわ目を引く赤い布。これは、もちろん何かを意味する旗のようなもの(鉄道ならば赤・緑・白の手旗ことフライ旗)ではなく、調合した染料の発色を確かめる白生地の断片です 。
■染料の調合
化学染料を使うとは言え、調合と発色の関係は、簡単に数値化されるものではなく、「染料と水などの分量×布の性質×長年の経験」によって、意図通りの色合いが導き出されます。
■発色を確認する
調合した染液に白生地の断片を浸し、実際の染まり方を確認します。これを乾燥させ、さらに発色の具合を目で見極めるのです。
■染料の湯煎
染工場の「紺屋」(染めを行う空間)には、さまざまな染料がそれぞれの性質や使われ方に応じて、あちこちに準備されています。こちらは、湯気が立つ水槽で湯煎中の染料。
論集『地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~』前半のご紹介
[NEWS Vol.26]
館外プロジェクト「地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~」の市民参加プログラムは、来る12月6日(日)に開催される「まとめシンポジウム」で締め括られますが、年度末の2016年3月末日には、論集『地域産業とデザイン ~宮の注染を拓く~』 が発行となります。
その前半では、プロジェクトで「共創」の重要な部分を担って来た中川染工場と「わがまちの注染」に加えて、
◆福井染工場(栃木県宇都宮市)と注染以外の染め
◆オコシ型紙商店(三重県鈴鹿市)と伊勢型紙
など、調査で訪れた各所、関連する領域とその技法についても、詳しく紹介する予定です。
暫く先の話となりますが、編集作業の進捗状況は、掲載内容とあわせて随時お知らせします。
どうぞお楽しみに。
中川染工場にて 注ぎ染めの様子 |
福井染工場にて 型付け中の半纏地 |
鈴鹿市伝統産業館にて 渋紙のいろいろ |
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画像の説明
■中川染工場にて
11月6日、本プロジェクトの受賞作の試し染めが行われました。
■福井染工場にて
9月30日、遠方のお祭りに納品される半纏の型付けを取材しました。
■鈴鹿市伝統産業館にて
6月6日、伊勢型紙の調査と出品交渉のために鈴鹿市を訪れました。
展覧会場「宇都宮大学 峰ヶ丘講堂」のご紹介
[LEARNING Vol.23]
月日が経つのは早いもので、ついに木枯らしの舞う晩秋となりました。本プロジェクトもいよいよ大詰め、来る12月1日(火)から始まる館外企画展「宮の注染を拓く」の準備もたけなわです。
そこで今日は、展覧会場となる「宇都宮大学 峰ヶ丘講堂」(竣工1924年。設計=吉田 静)のご紹介をしましょう。
この講堂は、大学農学部前身の創設時の頃にさかのぼる木造の歴史的建造物です。その頃は「宇都宮高等農林学校 講堂」として知られ、同じ年に竣工の「旧・図書館庫」(大谷石造。現存)、「旧・本館」(木造。1949年に焼失)などが隣接していました。1926年には、旧・本館の背後に「フランス式庭園」(現存)も完成し、まさに「宮モダンの風景」が、当時は河内郡平石村(現・宇都宮市峰町)だった宇都宮郊外に出現したのです。
外観でもっとも目を引くのは、シンメトリーに配した大小の切妻破風から成る入口側のファサード。うち左右の小破風は、両側面の角へと連なり、正面性を強調するとともに、東西側面の視覚的なアクセントにもなっています。また、三つの破風の二等辺三角形と、玄関扉および二階に連続する縦長の窓がつくり出す逆三角が調和し、安定したひし形の構図のなかに、上昇感や軽やかさも感じられる意匠と言えるでしょう。
小さな正方形や円を重ねた軒下・窓上の瀟洒な装飾には、明らかにウィーン分離派の影響が見られ、インテリアの木工・漆喰細工も同じスタイルを示しています。
宇都宮大学 峰ヶ丘講堂 玄関 |
宇都宮大学 峰ヶ丘講堂 玄関ポーチのディテール |
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宇都宮大学 峰ヶ丘講堂 2階コリドール |
宇都宮大学 峰ヶ丘講堂 建築装飾 |
宇都宮大学 峰ヶ丘講堂 階段室 |
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画像の説明
■玄関
「宇都宮高等農林学校 講堂」として1924年に竣工しました。設計は、文部省技師の吉田静です。
■玄関ポーチのディテール
ポーチの屋根を支える列柱は分離派風のディテールが目を引きます。
■2階コリドール
コリードルから舞台を見下ろした様子。木工・漆喰細工が美しい室内です。
■建築装飾
室内を彩る漆喰細工のクローズアップ。
■階段室
玄関ホールから2階へ至る階段にはアーツ・アンド・クラフツの影響も見られます。
チラシ第3号の発行
[NEWS Vol.25]
本プロジェクトのチラシ第3号(A3二つ折り・全4ページ)の表紙をご紹介します。 デザインは、第1号・第2号と同じくGKグラフィックスの木村雅彦氏と工藤功太氏によりますが、今回は宇都宮大学 梶原研究室の岩田奈緒子さんも協力されました。モチーフは、7月19日に開催された公開ワークショップの成果――参加者・聴講者が描いたスケッチを元に、GKグラフィックスで図案化したパターン・デザインの集合写真です。プロジェクトを締め括る広報物に相応しい、皆さんのアイディアを結集し、かつトータルなアート・ディレクションに貫かれた《共創》のデザインと言えるでしょう。すでに美術館受付での配布が始まりましたので、ご来館の際には、ぜひ手に取ってご覧ください。
子どものためのワークショップ「うつのみやの《もよう》を見つけ、かたちにしてみよう」の開催
[NEWS Vol.24]
去る10月25日(日)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の第7回
(7) 子どものためのワークショップ「うつのみやの《もよう》を見つけ、かたちにしてみよう」
が宇都宮大学UUプラザ2階 コミュニティ・フロアで開催されました。
参加者は18名(子ども11名・保護者7名)で、進行は以下の通りでした。
[講師] 梶原良成 氏(宇都宮大学教育学部教授)、宇都宮大学教育学部 梶原研究室大学院生・大学生7名、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
■14:00~14:30
- 先生と美術館のごあいさつ
- 裕也お兄さん(学生さん)と桜子お姉さん(同)のおはなし――「宮染め」と「もよう」について
- 結佳お姉さん(同)と奈緒子お姉さん(同)のクイズ――「もよう」をじっくり見てみよう
■14:30~15:15
- 先生からの宿題「うつのみやのお気に入りの場所・もの・ことを見つけてこよう!(写真・絵・言葉など)」や、お兄さん・お姉さんたちと一緒に考えた「うつのみやらしい場所・もの・こと」を付箋に書いて模造紙に貼り出す
- それぞれが一番の「お気に入りのうつのみやの場所・もの・こと」をワークシートにスケッチする
- 選んだモチーフを発泡スチロールに描き写し、「もよう」の元になる「はんこ」を作る
■15:15~15:50
- 「はんこ」に水彩絵の具を付け、手拭いの大きさの色画用紙に「連続もよう」を作る
■15:50~16:00
- 作品の発表――モチーフは何か、どうしてそれを選んだか、ワークショップの感想など
ワークショップで制作した作品は、赤や青のリボンで結んで持ち帰っていただきました。どのお友だちも、とても素敵な作品ができたので、お家に帰って大切に保管したり、お部屋に飾ったことだと思います。
実はこのワークショップ、7月19日に一般を対象に開催した
(3) 考える・手を動かす公開ワークショップ「このまちにパターン・デザインを見つける」
そして、9月7日~9月25日に公募を行った
(5) パターン・デザイン公募ウィークス
と同じ内容を、より分かりやすく体験していただきましたが、大人に負けないような、大人もびっくりするような新鮮なパターン・デザインがいっぱい生み出されています。「宮の注染」のことや、わがまち宇都宮のことも、子どもたちの眼差しで、しっかりと理解していただけたと思います。
なお、本ワークショップの概要は、過去プログラムのフィードバックとして、また、参加できなかった皆さんにも読んでいただけるよう、ひいては、より多くの方々に本プロジェクトに対する興味を持っていただくために、画像を付して連載する予定です。
梶原先生のごあいさつ 宇都宮大学 フランス式庭園 |
お兄さん・お姉さんによるおはなしとクイズ | 宿題として持ち寄った写真 みんなで見つけた 「うつのみやらしい場所・もの・こと」 |
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お兄さん・お姉さんによる見本作品 | もようの元になる「はんこ」を作る | 「はんこ」をつなげて「連続もよう」を作る |
画像の説明
■梶原先生のごあいさつ、宇都宮大学 フランス式庭園
ワークショップの会場となったUUプラザは、美しいフランス式庭園(完成1926年)に面しており、秋の彩りでいっぱいでした。
■お兄さん・お姉さんによるおはなしとクイズ
裕也お兄さんと桜子お姉さんは、スライドや見本作品(お兄さん・お姉さんの手作り)を使って、「宮染め」と「もよう」についてお話してくださいました。結佳お姉さんと奈緒子お姉さんは、猫の柄の宮染め手拭いを使って、クイズ形式で「もよう」のモチーフや「繰り返し」の説明をしてくださいました。
■宿題として持ち寄った写真、みんなで見つけた「うつのみやらしい場所・もの・こと」
先生からの宿題(持ち寄った写真)、付箋に書き出した「お気に入りのうつのみやの場所・もの・こと」を元に、いよいよワークシートにスケッチを描いていきます。
■お兄さん・お姉さんによる見本作品
手拭いの大きさの5色の色画用紙に、発砲スチロール製の「はんこ」で「連続もよう」が押されています。色は水彩絵の具で、こちらも5色です。
■もようの元になる「はんこ」を作る
スケッチを描き写した薄い発泡スチロールを切り出し、少し厚めの発泡スチロールの板(10cmX10cm)に木工用ボンドで貼ると、もようの元になる「はんこ」が完成します。このお友だちは、「きぶな」のもようを作ろうとしています。
■「はんこ」をつなげて「連続もよう」を作る
「はんこ」に絵の具を塗り、色画用紙にぺたぺたと押し付けていきます。連続もようが一定の間隔で繰り返されるよう、お兄さん・お姉さんが発泡スチロールの「型枠」を何種類も用意してくださいました。このお友だちは、「大谷石を使ったカトリック松が峰教会の庭」がモチーフです。
「第1回 デザイン・制作ミーティング」の開催
[NEWS Vol.23]
去る10月14日(水)、「第1回 デザイン・制作ミーティング」が中川染工場で行われました。天気は快晴、最低気温10.1℃(午前6時)、最高気温22.0℃(午後3時)。午後の湿度は30%を切るという、絶好の「染め日和」でした。
[参加者] 阿久津幸生さん(宮の注染大賞)、坂本 明さん(準大賞[審査委員長・木村雅彦賞])、横山伊織さん(安森亮雄賞[審査員賞])、佐々木晴美さん(梶原良成賞[審査員賞])、大庭 亨さん(宇都宮美術館賞)、木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、武村里佳 氏(同社、デザイナー)、工藤功太 氏(同)、中川ふみ氏(中川染工場 専務取締役)、中川友輝 氏(同社)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
午前中に東京から来宇された4名の参加者には、「川探訪日和」でもあったので、JR宇都宮駅から中川染工場まで田川沿いをご案内し、わがまちの資源の一つである豊かな水の煌めきを堪能していただきました。
昼食後の13:30には他の皆さんも合流し、いよいよ「共創」を紡いでいく全員の初顔合わせです。自己紹介の後、それぞれの受賞者には制作意図や原画に対する思いを話していただき、GKグラフィックスの方々にはパターン化していくうえでのデザイン的なポイント、中川染工場のお二人には注染の技法に関わるアドヴァイスを伺っています。
出力や印刷で「紙」に表すのとは異なり、実際に「反物」として仕上げるには、これから「型紙を彫る」「注染のテクニックを駆使して染める」という高度な工程が控えています。そこで今日は、とりわけ注染の「柄」「型」「染」の特質について、中川さんに実践的なレクチャーをお願いしました。「ぼかし」「にじみ」「色合い」「文様のつながり方」「線の太さ・細さ」などの細かい点は、既存の製品サンプルを見ながら、多くの学びを得ています。
ミーティング修了後は、染工場の入口に建つ「大谷石蔵」をバックに、受賞者の皆さんのプロフィール写真を撮影。和気藹々のうちに16:00となり、日暮れの早い秋を感じながら充実の一日が終わりました。
「宮の注染大賞」 受賞者の阿久津幸生さん(左中) |
「準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)」 受賞者の坂本 明さん(左) |
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「安森亮雄賞(審査員賞)」 受賞者の横山伊織さん |
「梶原良成賞(審査員賞)」 受賞者の佐々木晴美さん(左) |
「宇都宮美術館賞」 受賞者の大庭 亨さん |
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画像の説明
■秋晴れは「染め日和」
午前中の染工場には、これから染め上げる無垢の反物が輝いていました。
■注染の「ぼかし」と「にじみ」
注染の高度な技術やデリケートな風合いは、既存の製品を見ながら、中川ふみさんと中川友輝さんに詳しいお話を伺いました。
■「宮の注染大賞」受賞者の阿久津幸生さん(左中)
ミーティング修了後は、受賞者の皆さんのプロフィール写真を撮影しました。
■「準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)」受賞者の坂本 明さん(左)
真剣な眼差しで、制作意図や思いを語られる坂本さん(左)と、その言葉に頷くアート・ディレクターの木村雅彦さん(右)。
■「安森亮雄賞(審査員賞)」受賞者の横山伊織さん
受賞者のなかで、最もお若い横山さんの原画は、どのようなフレッシュな新柄になるでしょうか。
■「梶原良成賞(審査員賞)」受賞者の佐々木晴美さん(左)
東京から参加された佐々木さん(左)は、一つひとつの事柄を詳しく質問。中川ふみさん(右)が丁寧に説明されています。
■「宇都宮美術館賞」受賞者の大庭 亨さん
大庭さんは、染めの世界も工場をご覧になるのも初めて。意気込みいっぱいの笑顔です。
公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」の流れ、「パターン・デザイン公募」の結果分析などについて
[NEWS Vol.22]
「市民プログラム」の第6回
(6)公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」
の開催、並びに同審査会で決定となった「パターン・デザイン公募」の最終結果については、先に報告した通りですが、ここでは付記として、その結果分析などをお知らせいたします。
~公開審査会の流れ~
[審査員] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、佐野 恵 氏(下野新聞社 宇都宮まちなか支局 記者)、安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、梶原良成 氏(宇都宮大学教育学部教授)
[司会] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
- 14:00~14:10 主催者あいさつ、プロジェクトと公募の趣旨・経過説明(橋本)
- 14:10~14:20 審査員自己紹介(木村氏・佐野氏・安森氏・梶原氏)
- 14:20~15:20 ベスト9作品の紹介(橋本)、審査員によるコメントと採点(全審査員)
- 15:20~15:40 休憩、採点結果のとりまとめ
- 15:40~15:50 結果発表(木村氏)
- 15:50~16:10 会場におられた3名の受賞者と中川ふみ氏(中川染工場)によるコメント、今後のスケジュール説明(橋本)
- 16:10~16:30 審査員講評(全審査員)、おわりのことば(橋本)
~公募のテーマ・審査評価基準・あり方~
[テーマ] ※応募要項の通り
いま・これからの地域内外の人々に愛される「宮モダンの(宇都宮らしい普遍的な)パターン・デザイン」
[審査評価基準] ※応募要項の通り
- 地域の自然・歴史観…宇都宮の「自然・風土」に根差し、「歴史・伝統」を踏まえているか。
- 普遍性と象徴性…過去の遺産を現代の視点で掘り起こし、国内外の次世代に支持されるような「宇都宮らしさ」「魅力・品格」を持っているか。
- 美的・文化的価値…「造形的な美しさ」「高い精神性」を備えているか。
- パターン・デザイン化と注染による試作の可能性…「パターン・デザイン」(文様)として発展させ、それを「注染」の技法で実現するのにふさわしいか。
[あり方]
上記のテーマと審査表記規準を踏まえた「コンセプト重視」の公募でした。よって提出用紙は、
- 応募シート
- 原稿シート…言葉でアイディアを伝える
- 作画シート(「色について」の記入欄あり)…スケッチでかたちを示す
の3種類から成り、2.3.は同じ比重で審査しています。
「パターン・デザイン公募」 テーマ |
「パターン・デザイン公募」 審査評価基準 |
「パターン・デザイン公募」 あり方 |
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~応募結果の分析~
[応募総数] 91件
[都道府県別]
■栃木県…59件 ※宇都宮市52件
■東京都…17件
■神奈川県…6件
■茨城県…3件
■千葉県・大阪府…各2件
■群馬県・長野県・富山県・滋賀県・兵庫県・広島県…各1件
地元が過半数を占めていましたが、他の地域からも多くの応募がありました。
[区分]
■個人…90件
■グループあるいは組織・団体…1件
思いのほか個人の応募が大多数でした。
[年齢層]
■19歳以下…15件 ※最低17歳
■20~29歳…34件
■30~39歳…11件
■40~49歳…11件
■50~59歳…11件
■60~69…4件
■70歳以上…5件 ※最高75歳
高校生からシニアまで幅広い年齢層からの応募がありました。
[審査段階別]
■1次 書類審査…合格90件
■2次 原稿審査…合格82件
■3次 作画・総合審査…合格25件
■4次 総合審査…合格9件 ※ベスト9作品
■5次 総合・最終審査…宮の注染大賞1件、準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)1件、安森亮雄賞(審査員賞)1件、梶原良成賞(審査員賞)1件、宇都宮美術館賞1件、佳作4件
公開審査会にご登壇いただいた4人を含む都合7名の審査員で、丁寧かつ入念に5段階の審査を行いました。
「パターン・デザイン公募」 応募結果の分析 都道府県別 |
「パターン・デザイン公募」 応募結果の分析 区分 |
「パターン・デザイン公募」 応募結果の分析 年齢層 |
「パターン・デザイン公募」 応募結果の分析 審査段階別 |
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子どものためのワークショップ「うつのみやの《もよう》を見つけ、かたちにしてみよう」について
[NEWS Vol.21]
◆わたしは、野原(のはら)や公園(こうえん)に咲(さ)いている花(はな)が大好(だいす)きです。でも、一番(いちばん)のお気(き)に入(い)りは、きれいな花(はな)もようのワンピース。大人(おとな)になったら、自分(じぶん)で花(はな)もようの布(ぬの)をデザインしてみたいと思(おも)っています。…でも、どうしたら、花(はな)の絵(え)が花(はな)もようになるのかなあ。先生(せんせい)、教(おし)えてください! ( 小学校低学年)
◆私も、絵画作品とパターン・デザインの違いや、水玉や縞の文様がどのように生み出されるのか、とても興味あります。実家のお爺ちゃんも誘っちゃおうかしら。(保護者)
◆わがまちのオリジナル・パターンについても、ぜひ子どもたちと見つけたいですね。(学校教員)
◆ねえ、ペアで申し込んでみない? …あなたはお洒落なインテリア・ファブリックに目がないんでしょ! (若いカップル)
このワークショップは、そんな皆さんの疑問やリクエストにお応えする内容です。誰にも分かりやすく、楽しい時間が過ごせます。小学生以上ならば子どもだけで、もっと小さいお友達は大人と一緒に、もちろん大人のみの参加も受け付けます。
詳しくは、下記
http://miyazome2015.jp/events/index.html
をご覧ください。
公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」の開催と、「宮の注染大賞」ほか各賞の決定について
[NEWS Vol.20]
去る10月4日(日)、本プロジェクトの山場となるパターン・デザイン公募ウィークスの公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」が宇都宮美術館 講義室で開催されました。
応募総数は91件、この審査会(最終5次選考)に残った9件のなかから
■宮の注染大賞…1点
■準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)…1点
■安森亮雄賞(審査員賞)…1点
■梶原良成賞(審査員賞)…1点
■宇都宮美術館賞…1点
■佳作…4点
が決定しています。
今回のプロジェクトは、公募が最終ゴールではなく、宮の注染大賞・準大賞(木村雅彦賞)・安森亮雄賞・梶原良成賞・宇都宮美術館賞に輝いたものを、これから
■文章・パターン原図によって「アイディアとかたち」を提案してくださった応募者
■これを「宮モダンのパターン・デザイン」に高めるデザイナー
■パターン・デザイン化された新柄を「反物の試作」として染め上げる中川染工場の皆さん
■全体を切り盛りし、制作の工程を「わがまちの糧」として市民の皆さんへフィードバックしていく美術館
による「共創」が始まります。
このような共創の経過、今後の予定、並びに公募の詳しい分析などは、順次、お知らせしていきますので、ここでは先ず、第一報の「速報」として、審査員・最終結果を以下の通り発表いたします。
[審査員] 審査委員長・木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、ゲスト審査員・佐野 恵 氏(下野新聞社 宇都宮まちなか支局 記者)、審査員・安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、審査員・梶原良成 氏(宇都宮大学教育学部教授)
[司会] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
宮の注染大賞 「大谷石採掘の痕跡」 ©http://miyazome2015.jp/ |
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■宮の注染大賞
エントリーNo.107 「大谷石採掘の痕跡」
[モチーフの解説(制作意図)]
大谷石の塀や蔵、構築物が日常風景のひろがりに、宇都宮独特の地域性を感じる。宇都宮の肌理は大谷石なのではないかと思うことがある。大谷石のミソや鉱物、そして多様な仕上げはとても有機的であり、ぬくもりがある。これらを産出した大谷石採掘場壁面の痕跡には規則性があり、無意識の造形美を感じた。ツルハシによる手掘りの横線の切りあとやモジュールに則り、機械掘りで刻まれた縦の直線は、とても鮮やかなコントラストを放つとともに、美しいコンポジションである。大谷石の模様や刻まれた模様は、宮染めにより鮮明な模様になると考える。
[色彩について]
直線は、宮染めの主体である天然染料の藍で時代を紡ぐ。
横線(点)は、注染独特の「にじみ」や「多色」を用いて、大谷石の「みそ」や「鉱物」の柄を表現できないだろうか。
©http://miyazome2015.jp/
■準大賞(審査委員長・木村雅彦賞)
エントリーNo.101 「大谷石の石屋根」
[モチーフの解説(制作意図)]
大谷石の石屋根について文献を当たってみると、天明8年(1788年)に幕府の巡検使に随従した古川古松軒が書き残した紀行文『東遊雑記』にたどり着きます。「宇都宮の城下長き町なり、(中略)近郷は石のやわらかなるありて、夫(これ)を製し瓦のごとくして、堂塔の屋根に葺いてあり。他国になき石なり」と書かれています。宇都宮を象徴するものとして、未来に残すものとして、風土に根ざした大谷石の石屋根は宇都宮そのものです。男瓦と女瓦の華麗な組み合わせの繰り返しは、独自の伝統美であり、まさに「宮染め」にふさわしい文様です。
[色彩について]
小紋ならば紺。
白地に大柄文様として散らすなら紺鼠。
©http://miyazome2015.jp/
■安森亮雄賞(審査員賞)
エントリーNo.109 「宮ドット」
[モチーフの解説(制作意図)]
宮染めの普及のためのパターンには、地域性があるだけでなく、人々が日頃の生活で使用でき、且つ普遍性のあるパターンが必要だと考えた。そこで、現代よく利用され、普遍的なパターンの一つであるドット柄に宇都宮らしさを盛り込んだデザインとした。具体的には、通常、点と点を離して配されるドットを、点同士重ねて配することで、点と点の余白部分に、宇都宮市の市章であるカーブした亀甲の模様が浮かび上がってくる。亀甲は、宇都宮城が「亀ヶ丘城」と呼ばれたことに由来している。人々の生活に溶け込みつつ、宇都宮らしさのあるパターンを目指した。
[色彩について]
ドット部を青(薄)、線と余白を白とする。青(薄)は江戸好みの色であり、和を感じさせる。また、宮の注染は田川で行われていることもあり、田川を想起させる色とした。
©http://miyazome2015.jp/
■梶原良成賞(審査員賞)
エントリーNo.108 「きぶなのぼり」
[モチーフの解説(制作意図)]
このパターンは、宇都宮の名物である「きぶな」が、川を上っていくところをイメージして制作しています。シンプルな曲線で川の流れを表現し、その線に色をつけていくことで、川を泳いでいくふなの姿を表しました。明るく光る川の波間にちらりと見える黄色い背中、川をのぼる「きぶな」の姿です。「きぶな」の置物は、もともと、疫病が流行った際に人々の健康を願って作られるようになりました。その「きぶな」が川を泳ぐ姿に、過去の疫病も、この度の水害も、力強くもしなやかに乗り越えて行けたらという願いを込めています。
[色彩について]
「川のながれ」と「きぶな」をイメージする「青・黄・赤」が望ましいのではないかと考えています。青のしぶき次第で柄全体が、モダンなものにもしぶみのあるものにも寄せる事ができそうです。ただ、「川のながれ」自体は波形があれば伝わるかと思いますので、黄色い波の中に、赤い頭が見えるなど、他の雰囲気の色合わせを制作する事も考えられます。
今回はデザインの性質上、モノクロームでの表現が難しいものでしたので、カラーにて応募させていただきました。ご容赦いただけますと大変幸いです。
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■宇都宮美術館賞
エントリーNo.105 「田川の水面のきらめき」
[モチーフの解説(制作意図)]
宇都宮は川の街であり、現代では先端的テクノロジーを生み出す街でもある。注染を育んできた田川の川面のきらめきと、現代的なテクノロジーのエッジの鋭さを、田川の田の字を隠す図案に表現した。水色で水を、黄色で光を、朱色で人々のエネルギーを象徴する。田の字は日本的な自然をも象徴化している。線の色や繊細さ、パターンの密度を変えることによって、同じパターンながら色々な表情を与えることもできる。抽象化された図案であるので、グローバルな普遍性と試作実現の可能性を兼ね備えていると考えられる。未来に向かう時間軸も含む。
[色彩について]
朱色、黄色、水色。
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■佳作
エントリーNo.102 「旧篠原家住宅の外壁」
[モチーフの解説(制作意図)]
JR宇都宮駅から徒歩3分。昔から交通の要衝である白沢街道に、江戸時代から醤油醸造業を営んだ旧篠原家住宅がある。街ゆく人にも良く見える土蔵造の豪壮な建物は、外壁に特産の大谷石を貼り、目地の漆喰をなまこ状にして防火性を高め、明治から戦前の商都宇都宮の賑わいを今に伝えている。戦時下では空襲で街中が焼失する中、奇跡的に焼け残り、炊き出し所にもなった。宮の注染と同時代を生き抜いた貴重な文化財の単純で力強い外壁模様をモチーフとすることで、街の記憶の継承を測り、これからの街の姿の手がかりとなるものである。
[色彩について]
旧篠原家住宅の母屋外壁にならい、大谷石の白と漆喰の黒を対比させて、地の色を白、線を濃紺とする。
一方で、大谷石は切り出した場所や時間経過により、白、青緑、黄色と多彩な色あいをみせ、同じ石の中でもみそと呼ばれる茶、青い結晶が美しい。このことから、線を白漆喰にみたてて白抜きとし、地を注染ならではのにじみ、グラデーションを生かした色で(青緑、黄など)応用することも可能である。
©http://miyazome2015.jp/
■佳作
エントリーNo.103 「大谷石塀の温もり」
[モチーフの解説(制作意図)]
大谷石蔵、塀等は独特の景観がある。石というのは、硬くて冷たいという印象だが、大谷石は柔らかく、温かく、人間的な温もりすら感じさせる。この柔らかさ、温かさ、温もりを全体の基調にした。大谷石の代表的建造物の松が峰教会の祭司さんは、色が優しい、心が鎮まる、と大谷石の特性として挙げている。これらは、古代の地下で眠っていた、その息吹のようなものと連動している。視覚的に宮モダンを感じ、普遍的なベースとなるようなところから手描き、あきのこないシンプルなデザインとした。誰でも気軽に楽しむことを願って!
[色彩について]
大谷石の柔らかさ、古代の地下に眠っている人間的な温もりのあるトーンを選んだ。誰にも親しみやすく、自然と暮らしの中に融合し、着るものだけでなく、衣食住全般に応用できるものと考える。
©http://miyazome2015.jp/
■佳作
エントリーNo.104 「雷」
[モチーフの解説(制作意図)]
危険な雷を、農産物をもたらす風物詩としてポジティブに捉える宇都宮市民らしい明るいデザイン、関東武士の土地柄らしいはっきりとしたデザイン、老若男女、国籍の区別なく着用できるデザインであることがポイントです。雷を表現した部分は、伝統的な雷文をアレンジし、同じくアレンジした伝統文様である霊芝雲文(れいしぐももん)を加えました。市民以外には、一見わかりにくい雷の表現を採用したことで、このパターンを見た国内外のお客様に、宇都宮の伝統・歴史、市民の気質を説明できるツールにできることを想定しております。
[色彩について]
はっきりした色合い。
©http://miyazome2015.jp/
■佳作
エントリーNo.106 「雷」「う」
[モチーフの解説(制作意図)]
宇都宮の「う」というやさしい始まりの音が、あたたかい土地柄を感じさせる。そして雷都とよばれる激しい宇都宮の「雷」も、頑強な信念の人柄を、感じさせる。おそらくこの地の方々は、毎年の雷にお腹の底からの恐怖を感じ、夏という生命力溢れる季節を感じながら、長い年月、地を耕し、繁栄させ、豊かなこの土地を愛してきたのだろう。「雷」という大自然への畏怖の念を、「う」のもつ優雅でダイナミックな曲線で表現し、願わくば、これからの日本文化を率先する宇都宮ネオモダンとなる事を望む。
[色彩について]
雷のエネルギーと畏敬の念を感じさせる、品のあるオレンジ系アースカラー。
大谷石を思わせる、あたたかく明るい土色。
同系色2色のトーン。
©http://miyazome2015.jp/
公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」について
[NEWS Vol.19]
本プロジェクトのパターン・デザイン公募は、去る10月25日(金)をもって締切とさせていただきました。お蔭様で、応募総数は91件に及び、市内・県内を始め、他府県からも多数のアイディアをお寄せいただき、本当にありがとうございました。
公募の広報にご協力をいただいた方々、本プロジェクトの進行を温かく応援し、見守っていただいている皆さまを含めて、すべての「宮の注染」ファンに対して、この場を借りまして、改めて御礼を申し上げたいと存じます。
集められた応募は、先週末から今週いっぱいを掛けて、1次(書類)・2次(原稿)・3次(作画・総合)・4次(総合)という段階的な審査の直中にあります。そして、来る10月4日(日)には、一般聴衆を前にしての公開審査会「このまちに宮モダンを見つけて」が開催され、その場にて
■宮の注染大賞
ほか各賞が決まります。
つきましては、皆さまお誘い合わせのうえ、本審査会にお運びいただければ幸いに存じます。
季節も秋本番――刈り入れの終わった田畑にはカモの仲間が飛来し、野には秋桜や鶏頭など、色とりどりの花が美しく咲き誇る頃となりました。わがまちを散策するも良し、また、美に親しむも良し。パターン・デザインの源泉探しにも打って付けなのは、言うまでもありません。
「これからの宮モダンを見つける」説明会・記者発表の開催
[LEARNING Vol.22]
去る9月6日(日)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の第5回
(5)パターン・デザイン公募ウィークス「これからの宮モダンを見つける」説明会・記者発表が宇都宮美術館 講義室で開催されました。
講師・進行は以下の通りでした。
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
■主催者挨拶
■14:00~14:30 プロジェクトの趣旨説明と経過報告(橋本)
■14:30~15:00 パターン・デザイン公募に関する詳しい説明(木村氏)
■15:00~ 質疑応答
木村氏のお話は分かりやすく、とりわけ一枚の印象的なスライド「本プロジェクトにおける協創法方」によって、この取り組みが目指すところ、その精神やあり方
- 地域の資産を再発見し「デザインの力」で、新たなパターン(文様)を開発し、注染の技術を用いて反物の試作を作る
- 応募者、デザイナー、宇都宮大学、中川染工場、宇都宮美術館による協創を行う
が明確に伝わったと思います。
また、会場の皆さんからのご質問は、いずれも的確なものばかりで、市民の方々の期待や応募に対する意気込みを代弁していたと感じて止みませんでした。
なお、応募要項・書類一式のダウンロードはこちらから、
応募期間は、9月7日(月)から9月25日(金)必着となります。
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
アート・ディレクターの木村氏による説明 | 本プロジェクトにおける協創法方 画像提供=木村雅彦氏(GKグラフィックス) |
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パターン・デザイン公募のテーマと審査評価基準 |
中川染工場の注染浴衣を着た聴衆 |
画像の説明
■アート・ディレクターの木村氏による説明
上映スライドは、7月19日に開催された公開ワークショップ「このまちにパターン・デザインを見つける」の成果
■本プロジェクトにおける協創法方
関わる人々の関係性、テーマに則ったアイディアの図案化と言葉化、その選考、パターン・デザイン化などが明確に示されている
■パターン・デザイン公募のテーマと審査評価基準
応募要項p.1より抜粋
■中川染工場の注染浴衣を着た聴衆
注染の図案(色・かたち)と技法の特質を説明するには、うってつけの素材である
注染浴衣に袖を通すまで――「宮の注染」の生産現場から|第3編
[LEARNING Vol.21]
■第3編「型付け」
[取材協力] 中川ふみ 氏(中川染工場 専務取締役)、中川友輝 氏ほか染工場の皆さん
生地と型紙の準備を終えると、注染を特徴づける重要な工程の一つ
- 型付け
へ進みます。
第2編でも触れた「型紙と糊の役割」「防染による文様の出方」は、他の型染め技法にも共通する原理ですが、注染の場合、
- 生地を折り返す
発想を加えることで、最も原初的な量産の考え方が導入された、として良いでしょう。
明治期に注染が考案されるまでは、
- 大きな板に布を張り、これに中サイズの型紙を当て、紙幅で片面ずつ生地を張っては剥がし、両面に型付けする
いわゆる「長板中形」で浴衣地が染められました。柄合わせ、糊置きなどすべてに於いて、非常に高度で熟練を要する技法です。
一方、注染は、
- 生地を型付け台に置き、木枠に固定した型紙を上に載せて密着させ、糊をへらで満遍なく延ばした後、布を同じ幅で折る(観音折り)
この作業を繰り返していくので、
- 一度に生地の両面に糊を付着させ、一反分の布の型付けを一連の動作で進める
ことが可能です。
もちろん、木枠の位置がずれないよう気を遣い、折り方にも細心の注意を払ってこそ、文様の正確さと連続性が保たれる点では、やはり習熟度が求められます。それでもなお、根底には合理的な生産の意識があり、他の伝統的な染めとは一線を画しています。
版(木枠+型紙)の構造や扱いは、シルクスクリーン印刷と似ています。ところが、生地を直接、型紙で刷る(染める)のではなく、
- 糊による防染(言わば「版で版を作る」ステップ)が間に挟まる
ため、シルクスクリーン印刷とは異なり、注染はイメージと地が反転しません(第2編参照)。
糊は、
- 澱粉糊(餅米粉+糠+消石灰)
- 海藻糊(海藻成分+水+粘土)
の二種類が用いられます。
型付けの道具と材料 於・中川染工場 |
捨て布の型付け 於・中川染工場 |
へらによる型付け 於・中川染工場 |
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注染の工程(模式図) 型付け(1)(2) 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
注染の工程(模式図) 型付け(3)(4) 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
注染の工程(模式図) 型付け(5)(6) 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■型付けの道具と材料
作業を行う型付け台、その上に型紙を固定する木枠、捨て布と丸巻きの生地があり、右手に糊を入れた大きなたらい、左側の壁には糊置きで使うへらが並ぶ。窓・壁際の高い位置には、木枠が幾つも吊り下げられている。
■捨て布の型付け
生地が汚れないよう、また、一種の試し刷り(糊置き)のために、まずは捨て布に木枠を載せ、二回ほど糊を延ばす
■へらによる型付け
シルクスクリーン印刷のスキージを思わせる木製のへらを用い、木枠いっぱいに満遍なく、ムラにならないよう糊を置く。熟練を要する重労働である。
■注染の工程(模式図)
型付け(1)…生地に型紙を載せ、その上から糊を付ける
型付け(2)…糊は紗張りの部分のみ通って、生地に付着する
■注染の工程(模式図)
型付け(3)…型紙を取り除く
型付け(4)…生地を折り返す
■注染の工程(模式図)
型付け(5)…再び型紙で糊を付ける
型付け(6)…再び型紙を取り除いて、生地を折り返す。以降、糊付けと折り返しを繰り返していく
注染浴衣に袖を通すまで――「宮の注染」の生産現場から|第2編
[LEARNING Vol.20]
■第2編「型紙とその準備」
[取材協力] 中川ふみ 氏(中川染工場 専務取締役)、中川友輝 氏ほか染工場の皆さん、起 稔 氏(オコシ型紙商店)
洗って、干して、巻いて、寝かせる――生地の下準備が整うと、次に型紙を用意します。最初に、
- 型紙を水に浸けて軟らかくする
その主な理由は、型付け(型と糊で文様を付ける工程)で、型紙が伸縮することを防ぐためです。
中川染工場の場合、建物の外に設置された水槽を使っており、これが実は、地域の糧である
- 大谷石をセメントで固めたもの
この水槽以外にも、水を使う工程に関係するさまざまな設えには、大谷石が多々用いられており、わがまちならではの工場ディテールと言えます。
注染だけではなく、友禅や小紋など、わが国の伝統的な型染めで使われる型紙は、とても手の込んだ作りです。
- 三枚の和紙( 手漉きの美濃紙)を、それぞれの「目」が互い違いになるよう(合板と同じ要領)、柿渋で貼り重ねる
- 天日で干し、おかくず(松・杉・檜)の煙で燻し、再び柿渋に付けて燻す
これだけでも40日以上を要し、さらに数ヶ月から一年ほど寝かせたものを、
- 丁寧に彫る(日数は文様によりけり)
- 補強のために紗張りする(細かい絹の網を漆で貼る)
以上で、ようやく完成です。
印刷技法になぞらえると、孔版に分類される型染めですが、型紙と実際に染め出される文様の関係、柄が現れる仕組みは、間に糊が介在するため、少し説明が必要かも知れません。
(1)型紙を使って生地に糊を置く
紗張りの部分は糊が通り抜けるので、下の生地 に糊が付着して、その部分が防染される。これに対して、彫り残された渋紙の部分は糊を通さないため、下の生地に糊が付着せず、その部分は防染されない。
(2)糊置きした生地を染める
糊で防染された部分は、染料が染み込まないので、生地色のまま(白生地ならば白)となる。これに対して、防染されていない部分は、染料が行き渡り、染料の色(紺ならば紺)に染まる。
つまり、型紙の図案が反転するのではなく、
- そのまま染め出される
反転させたい場合、濃い色に先染めされた生地の色を、型紙を使って脱色させます。
以上の原理を念頭に、染めの現場に話を戻すと、続いて
- 型紙を木枠に固定し、生地を載せる型付け台に 木枠をセットする
よって型紙は、布と接する側に張られ、また、上げ下げする際に木枠がずれないよう、型付け台には種々の工夫が見られます。
型紙の準備 於・中川染工場 |
古典的な型紙 中川染工場蔵 |
昭和30年頃の注染型紙 オコシ型紙商店蔵 |
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セットが完了した型付け台(作業者側) 於・中川染工場 |
セットが完了した型付け台(木枠背面) 於・中川染工場 |
画像の説明
■型紙の準備
型紙を水に浸けて軟らかくし、伸縮を防ぐ
■古典的な型紙
渋紙で貼り重ねた和紙に文様を彫ったもの
■昭和30年頃の注染型紙
紗張りされた渋紙の注染型紙(左上)、デジタルに色付けした文様(右下)
■セットが完了した型付け台
型紙を木枠に固定し、型付け台へのセットが終わった様子(作業者側から見たところ)
■セットが完了した型付け台
型紙を木枠に固定し、型付け台へのセットが終わった様子(木枠背面から見たところ)
注染浴衣に袖を通すまで――「宮の注染」の生産現場から|第1編
[LEARNING Vol.19]
この記事は、去る8月1日(土)に開催された
(4)見る・知るワークショップ「注染の生産現場を体験する」
の内容に基づき、当日以外の取材内容も盛り込んだ連載として綴るものです。
■第1編「生地の乾燥と丸巻き」
[取材協力] 中川ふみ 氏(中川染工場 専務取締役)、中川友輝 氏ほか染工場の皆さん
注染で用いられる生地は、
- 平滑で薄く、布目の詰まった白い木綿
が主体でした。
型付け(型紙と糊で文様を付ける工程)の際に、生地を何度も折り返し、それから染料を注ぐので、このタイプの布が「折り」と「染め」に最適だからです。
しかし現代では、とりわけ趣味性が高い浴衣地の場合、平織りの白木綿だけではなく、
- 少し厚口でざっくりとした味わいの綿紬
- 透かし織りの一種である綿絽
- 綿と他の繊維による交織(綿麻ほか)
- 先染めの色生地
など、ヴァリエーションの広がりが見られます。
いずれにせよ、最初の工程では、
- 生地を晒す
すなわち、薬剤に浸け、水洗いをして乾燥させる作業が発生します。繊維の間にある不要な成分と汚れを除去し、染色に適した状態にするためです。
- 精錬を経た生地
は、工場内の
- 櫓で自然乾燥
させ、次に
- 電動巻取機で一反ずつ丸巻き
にします。さらに、
- 巻いた状態で寝かせる
こと数日。こうして生地は、丁寧に巻くことで、布目が整った塵ひとつないものとなり、寝かせている間に細かなしわも伸び、染めの工程で使えるようになるのです。
興味深いのは、
- 明治生まれの注染
は、近世以前に育まれた伝統工芸とは異なり、たとえば電動巻取機など、
- 時代ごとに産業機械
が導入され、それによって、むしろ
- 技法が発展
した点でしょう。
そもそも生地は、地域の手織り最高級品(真岡の「特岡」など)では立ち行かず、
- わが国に於ける木綿紡織技術の近代化
と歩調を合わせながら、また、
- 交通・物流網の発達
にも助けられ、
- 機械織りの遠隔地産(主に東海・中京地区)
が産業に寄与しました。
浴衣地と白木綿 於・中川染工場 |
生地の乾燥 於・中川染工場 |
生地の丸巻き 於・中川染工場 |
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太鼓にして寝かせる 於・中川染工場 |
わがまちの産業機械 於・中川染工場 |
工場建築の見どころ 於・中川染工場 |
画像の説明
■浴衣地と白木綿
染め上がった浴衣地越しにかいま見る、乾燥中の白木綿
■生地の乾燥
精錬した生地を、櫓に吊り下げて自然乾燥させる
■生地の丸巻き
乾燥後の生地を、電動巻取機で丸巻きにする
■太鼓にして寝かせる
丸巻きした生地を、太鼓状にまとめて寝かせる
■わがまちの産業機械
宮の注染を支えて来た電動巻取機
■工場建築の見どころ
電動巻取機の足下は、床に穴が開いている
チラシ第2号の表紙デザイン
[NEWS Vol.6]
本プロジェクトのチラシ第2号(A3二つ折り・全4ページ)の表紙をご紹介します。 デザインは、第1号と同じくGKグラフィックスの木村雅彦氏と工藤功太氏により、木村氏が手がけた「栃の葉をモチーフにしたスケッチ」を背景に用いています。すでに美術館受付でのチラシ配布が始まりましたので、ご来館の際には、ぜひ手に取ってご覧ください。
考える・手を動かす公開ワークショップ|概要(3)
[LEARNING Vol.18]
■考える・手を動かす公開ワークショップ|第3編
[講師]木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、武村里佳 氏(同社、デザイナー)、工藤功太 氏(同)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ]社会人2名、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生・大学生 5名、女子美術大学大学生1名、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
このワークショップの場合、全参加者と一部(希望)聴講者のスケッチは、アート・ディレクターである木村氏の手により、精度の高いパターン・デザイン化が試みられ、さらに、それを用いた試作(成果品)として、GKグラフィックス謹製のポスト・カードも制作されました。
オリジナルのパターン・デザインを生み出すにあたっては、スケッチを描いた人それぞれの意図、希望の色(ねず=灰色、紺、やぶ=赤茶色、うす=水色 のうち1色)に照らして、モチーフを美しく連続的に見せる、という「デザインの力」の実践があり、私たちが一般的に知るところの(狭義の)デザイン――色やかたち(ポスト・カード)が参加者・一部聴講者へフィードバック(事後送付)された時点で、
- 構想・設計する
- 生産・実現する
- 消費・受容する
ことの総体たるデザインが完結しています。
ここでは、スタッフが用意した見本のポスト・カードと、そのスケッチ、これに基づくオリジナルのパターン・デザインをご紹介します。
見本のポスト・カードを手にする木村氏 | 見本のポスト・カード(4色) 画像提供=GKグラフィックス |
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見本のスケッチ「稲妻」 画像提供=GKグラフィックス |
見本のパターン・デザイン「稲妻」 画像提供=GKグラフィックス |
考える・手を動かす公開ワークショップ|概要(2)
[LEARNING Vol.17]
■考える・手を動かす公開ワークショップ|第2編
[講師]木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、武村里佳 氏(同社、デザイナー)、工藤功太 氏(同)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ]社会人2名、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生・大学生 5名、女子美術大学大学生1名、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
ワークショップの「後半」は、「参加者のスケッチに基づくイメージのパターン・デザイン化」が主体でしたが、一貫して
- デザイン的な思考
- デザインの方法論
- デザインの表現や可能性
に則った作業が粛々と進められました。
それは、参加者・聴講者の皆さん(市民)とスタッフ(クライアント+デザイナー)が一丸となって、
- デザインの構想・設計者
- デザインの生産・実現者
- デザインの消費・受容者
の立場で、本プロジェクトが肝要とする
- デザインの力
すなわち、条件や制約のなかで、具体的な目的を達成する・問題を解決するための最良のアプローチを、「宇都宮らしいパターン・デザイン」というテーマの下に、実地で識る貴重な時間に他なりませんでした。
ここで、今一度、プロジェクトの全体趣旨をおさらいして見ましょう。
本サイトの「プロジェクトについて」でも明記している通り、「デザインの力」で括られる今回の活動は――
単なる「ブランディング」、あるいは「B級グルメ」「ゆるキャラ」「出身の有名人」に依存するような世界ではなく、かつ「まちの歴史・伝統と無関係なクリエイティヴ」を推進するものではありません。名実ともに「宇都宮の訴求力・文化」に対する認識を深化・高揚させることを、美術館が中心となって、地域の人々と一緒に試行錯誤していきます。
その良きまとめ役となるのは――
「デザインの質」に責任を持ち、「統一的な質」を監督するアート・ディレクターです。
参加者の秀逸なスケッチから、どれほど「質の高い」「普遍的な」デザインをアート・ディレクターの木村氏が導き出したかは、A班・B班・C班の事例一つずつをご覧になっていただければ、至極明瞭だと思います。
モチーフがかぶらないよう、
A班=宮の注染(その美しい形象)
B班=わがまちの歴史(有史以前と現代)
C班=石の街うつのみや(素材・産業・建築)
によるオリジナル・パターンを選びました。
A班の事例「染め布の重なり」 右図提供=GKグラフィックス |
B班の事例「自転車のサドルと鯨(の化石)」 右図提供=GKグラフィックス |
C班の事例「大谷石の塀」 右図提供=GKグラフィックス |
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画像の説明
■A班の事例「染め布の重なり」
宮の注染そのもの(その美しい形象)がテーマです。
左…参加者のスケッチ
右…アート・ディレクターが完成したオリジナル・パターン
■B班の事例「自転車のサドルと鯨(の化石)」
わがまちの歴史(有史以前と現代)がテーマです。
左…参加者のスケッチ
右…アート・ディレクターが完成したオリジナル・パターン
■C班の事例「大谷石の塀」
石の街うつのみや(素材・産業・建築)がテーマです。
左…参加者のスケッチ
右…アート・ディレクターが完成したオリジナル・パターン
考える・手を動かす公開ワークショップ|概要(1)
[LEARNING Vol.16]
この記事は、去る7月19日(日)に開催された
(3)考える・手を動かす公開ワークショップ「このまちにパターン・デザインを見つける」
の概要を、連載で報告するものです。
[講師]木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、武村里佳 氏(同社、デザイナー)、工藤功太 氏(同)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ]社会人2名、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生・大学生 5名、女子美術大学大学生1名、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
全体を括るテーマは、「普遍的な宇都宮らしさ」です。その発見と客体化、創造性と永続性のある発信にあたって、「デザインの力」がどれほど有効なものであるかについて、以下の流れで、参加者と聴講者の全員がリアルに体験しました。
- 講師の木村氏によるレクチャー(前半)
- グループごとの分析とディスカッション(前半)
- GKグラフィックスのスタッフによるガイダンス(後半)
- 前半を念頭に置いた個々人のスケッチ(後半)
- 木村氏とGKグラフィックスのスタッフによるスケッチのパターン・デザイン化(後半)
- 木村氏の講評(後半)
実を言うと、この公開ワークショップは、本プロジェクトのエッセンス、ひいてはデザインという営為そのものを凝縮した内容になっており、
- デザイン的な思考
課題の根幹と条件・制約の見極め
これを踏まえて最適解を導くこと - デザインの方法論
考える人・つくる人・つかう人のレスポンス
プロフェッショナルによる分業と全体統括 - デザインの表現や可能性
成果として現れる色やかたちの工夫
これに則った新たな課題と最適解へのチャレンジ
をロール・プレイによって学ぶ良き機会でもありました。
前半 グループ・ワークの発表 |
後半 個人によるアイディアの提案 |
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成果(1) 参加者によるスケッチ「雷と大谷石」 |
成果(2) 聴講者によるスケッチ「石蔵・竹林・稲妻」 |
画像の説明
■前半…グループ・ワークの発表
「ことば→画像→集約・分析→ディスカッション」を経たグループ・ワークの発表。(上から順に)A班は葛原 希さん、B班は二瓶賢人さん、C班は小林基澄さんがリーダーとしてマイクを握りました。全員、宇都宮大学工学部 安森研究室の大学生です。
■後半…個人ワークのうち「個人によるアイディアの提案」となるスケッチ
アート作品ではないので、「普遍的な宇都宮らしさ」を分かりやすく伝える、しかも「注染で染め出せる図案」として成立するかどうかを、参加者とインストラクターが確認しながら制作を進めています。
■成果(1)…参加者によるスケッチ「雷と大谷石」
三つのグループが共通して「再発見した・発信したいモチーフ」の筆頭は「大谷石に関わるさまざまな事象」で、次に「雷(稲妻)」が挙げられました。興味深いのは、同じモチーフを選んでも、個々人の制作意図と表現が千差万別なことです。
■成果(2)…聴講者によるスケッチ「石蔵・竹林・稲妻」
参加者とともに、聴講者もスケッチに励みました。この事例は、「石蔵×竹林×稲妻」の記号化が特徴的です。
見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(6)
[LEARNING Vol.15]
■グループ発表|第5編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
第五のグループ「柳班」は、柳 紘司さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士2年)がリーダーを務めました。
このグループは、地誌や文化財に詳しい一般参加者に恵まれ、リーダー自身も「石のまち」の研究に携わって来たことから、個々の事象に関する知見と洞察が深く、その一つひとつを巡る論議が白熱しています。
多くの注目イメージのうち、とりわけ興味深かったのが、
- 旧・求喰川に架かっていた橋の束柱
です。田川水系に属する旧・求喰川は、今日では完全に暗渠と化していますが、宇都宮市立東小学校の敷地南側に残るこの橋の遺構など、 - 近代宇都宮が「石のまち=染めのまち=川のまち」だった日々の記憶
は、市内各所に確認することができます。
束柱とは、橋の欄干を支える構造物で、多くは欄干の下に伸び、装飾的なものは、親柱(橋の両端にある柱)同様、欄干を貫通し、建造された時代を示す様式である事例も少なくありません。ちなみに、東小学校南に見る束柱は、ゼツェッション様式(ドイツ語圏の新芸術)やオランダの表現主義の建築動向に影響を受け、わが国のモダニズム建築を拓いた - 「分離派」風の頂部とプロポーション
が目を引き、紛れもない - 「宮モダン」の名残
として良いでしょう。
素材・技法は、大正年間から昭和戦前(・戦後)に流行した「寒水石洗い出し」(種となる細かい石片をセメントで固め、水洗いで仕上げる人造石)を用いており、大谷石や御影石などの自然石ではありません。
これに対して、
- 石瓦で葺かれた芳宮山清巌寺の中門
- 多数の大谷石蔵と高い煙突を有する青源味噌
は、他のグループも言及していた「石のまち」の「歴史と産業を象徴するイメージ」です。
柳班の場合、こうしたイメージに、 - 石に対する人の働きかけ=労働
の痕跡を見詰めるなど、メンバーの活眼は深いものがありました。
事後、プロジェクトの担当学芸員は、「旧・求喰川ていた橋の束柱」を図案化し、
- 臈纈風抽象柱文
を編み出しています。
柳班の発表 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
旧・求喰川に架かっていた橋の束柱 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
芳宮山清巌寺の中門 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
---|---|---|
青源味噌の石蔵と煙突 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
観察から図案化へ 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
オリジナルの試作パターン 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■柳班の発表
リーダーの柳 紘司さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士2年)。このグループが注目したイメージは、「旧・求喰川に架かっていた橋の束柱」です。
■旧・求喰川に架かっていた橋の束柱
かつての橋は、かなりモダンなものだったことが、この分離派風の意匠から想像できます。
■芳宮山清巌寺の中門
近寄って見ると、石の男瓦と女瓦を精緻に組み合わていることが分かります。
■青源味噌の石蔵と煙突
「石のまち」の「歴史と産業」を象徴するイメージです。
■観察から図案化へ
旧・求喰川に架かっていた橋の束柱からパターンを導き出す――強烈な存在感を放つ象徴的な図像を簡略化し、色を足してみましょう。
■オリジナルの試作パターン
「旧・求喰川に架かっていた橋の束柱」から導き出された「臈纈風抽象柱文」。
見る・知るワークショップ「注染の生産現場を体験する」の開催
[LEARNING Vol.14]
去る8月1日(土)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の第4回
(4) 見る・知るワークショップ「注染の生産現場を体験する」
が中川染工場で開催されました。
参加者は15名で、進行は以下の通りでした。
[講師] 中川ふみ 氏(中川染工場 専務取締役)、中川友輝 氏ほか染工場の皆さん
[スタッフ] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
■10:00~12:00 体験学習
グループごとに、
- 予め用意された図案の型紙を使って、型付台の上で糊付け
- 型付けが終わった布を、染台の上で染色(糊による土手づくり+注ぎ染め)
- 染め上がった布の水洗い、脱水と立干し
■12:00~13:00 昼食・休憩
■13:00~14:30 体験学習+工場見学
グループごとに、
- 乾燥が終わり、丸巻きにした布をほどいて裁断
- すべての工程をつぶさに見学し、プロの技を堪能
■14:30~15:00 質疑応答
今回のワークショップは、これまでの市民プログラムとは異なり、参加者の一人ひとりが「ものづくりの現場」に入ることで、
- 素材と技法の特質
- 生産性
- 流通のあり方
に合致するパターン・デザインを考える契機になりました。
また、地域産業を盛り上げるには、優れた「メイド・イン・わがまち」を暮らしのなかに取り入れ、個々人が需要を生み出しながら、その普及に努めること、そのために、「魅力的なオリジナル製品」が不可欠であることの認識も深まったのではないでしょうか。
なお、本ワークショップの概要は、過去プログラムのフィードバックとして、また、参加できなかった皆さんにも読んでいただけるよう、ひいては、より多くの方々に本プロジェクトに対する興味を持っていただくために、画像を付して連載する予定です。
型付台の上での糊付け | 糊による土手づくり | 注ぎ染め |
---|---|---|
水洗いと立干し |
仕上げ | 盛夏のお楽しみ |
画像の説明
■型付台の上での糊付け
手拭いを被られた方は実技指導の職人さん、名札を下げた女性が参加者です。
■糊による土手づくり
異なる色を染め出すために、染台に載せた布に糊で土手を作ります。
(左)捨て布で練習する参加者。
(右)皆が見守るなかで本番に挑む参加者。
■注ぎ染め
薬缶で布に染料を流し込む緊張の一瞬。これこそ注ぎ染め(注染)の醍醐味です。
■水洗いと立干し
(右上・左下)糊と不要な染料を洗う工程。中川染工場では、水槽に田川の水を利用しています(排水は化学処理をして下水管へ)。
(左上)脱水機で水分を飛ばした後は、中庭で立干し。
■仕上げ
機械で丸巻きにした布をほどき、手拭いの長さに切っていきます。職人さん(左)も参加者(右)も満足感でいっぱい。
■盛夏のお楽しみ
(左下)中川染工場のご好意により、職人さんともども冷たいおやつをいただきながら、いろいろなお話を伺いました。
(右上)ワークショップ終了後、浴衣地をお互いに見立て、掘り出し物のB反を購入された参加者もおられました。
見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(5)
[LEARNING Vol.13]
■グループ発表|第4編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
第四のグループ「中岡班」は、中岡進太郎さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士2年)と二階堂桜子さん(宇都宮大学教育学部 梶原研究室3年)がリーダーを務めました。
このグループが他と大きく異なっていたのは、
- 時とともに変化する大谷石の色
に着目した点です。
宇都宮は名立たる「石のまち」ですが、その色彩については、意外にも見過ごされがちです。 - 掘り出されたばかりの大谷石は、しっとりとした緑味を帯びている
- 外気に触れて「枯れる」うちに白っぽくなり、ミソ(斑点)のある風合いが顕著になる
そして、建造物として時が経過するにつれ、 - 風雨にさらされて、色とテクスチャーが変化していく
採石場の違い、採掘される深さその他の条件によって、 - 石の色とテクスチャーは千差万別
中岡班の心の琴線に触れたのは、こうした事柄――大谷石の繊細さと移ろう風情、として良いでしょう。
加えて、 - 福井染工場の店頭に掲げられた藍の暖簾
など、まちに溢れる「豊かな色彩」に関する言及もありました。
事後、プロジェクトの担当学芸員は、青源味噌の大谷石蔵の図案化を試み、
- 幾何学抽象文
を編み出しています。
中岡班の発表 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
青源味噌の大谷石蔵 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
福井染工場の暖簾 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
---|---|---|
二番町の路地 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
観察から図案化へ 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
オリジナルの試作パターン 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■中岡班の発表
リーダーの一人、中岡進太郎さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士2年)。このグループが注目したイメージは、「時とともに変化する大谷石の色」です。
■青源味噌の大谷石蔵
一つの建造物であっても、部分によって異なる石遣いが見られ、変化の度合いも異なるため、さまざまな色を呈します。
■福井染工場の暖簾
「藍×白」という伝統的な色の組み合わせは、いなせな江戸好みを体現します。
■二番町の路地
田川水系の元・求喰川は、住宅街の情趣ある路地として残されています。日傘や浴衣の女性が似合う街角です。
■観察から図案化へ
「青源味噌の大谷石蔵」からパターンを導き出す――時の経過がもたらした色の数々を整理し、シンプルなコンポジションに置き換えてみましょう。
■オリジナルの試作パターン
「青源味噌の大谷石蔵」から導き出された「幾何学抽象文」。
見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(4)
[LEARNING Vol.12]
■グループ発表|第3編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
第三のグループ「宇佐見班」は、宇佐見喜一郎さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士1年)と福田裕也さん(宇都宮大学教育学部 梶原研究室3年)がリーダーを務めました。
このグループの場合、徹底して
- 市内各所の化粧舗装
に着目しました。車道・歩道・広場・階段などは元より、視覚障がい者誘導用ブロックや路上のチャッター・バー(道路鋲。通称「キャッツ・アイ」のこと)も取材の対象です。
それらの - 素材・工法の違い
- さまざまな目的・意匠
- 幾何学的な連続パターン
を丹念に拾うなかで、 - 全体として、街路にトータル・デザインがない
という鋭い指摘も出ています。
また、宇都宮らしい事例としては、大谷石をメインに、赤御影のアクセント・ラインを入れた - 釜川プロムナード「ふれあい広場」
が挙げられました。
このほか、 - 釜川プロムナードの遊歩道
- 田川河川敷の遊歩道とステップ
への言及がありました。
事後、プロジェクトの担当学芸員は、釜川プロムナード「ふれあい広場」の化粧敷石の図案化を試み、 - 幾何学抽象文
を編み出しています。
宇佐見班の発表 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
釜川プロムナード「ふれあい広場」 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
釜川プロムナードの遊歩道 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
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田川河川敷のステップ 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
観察から図案化へ 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
オリジナルの試作パターン 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■宇佐見班の発表
リーダーの宇佐見喜一郎さん(右。宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士1年)と福田裕也さん(左。宇都宮大学教育学部 梶原研究室3年)。このグループが注目したイメージは、「市内各所の化粧舗装」です。
■釜川プロムナード「ふれあい広場」
灰色の部分は宇都宮特産の大谷石、すべすべしたアクセント・ラインは赤御影を用いています。
■釜川プロムナードの遊歩道
数種類の形状、三色の素焼きタイル風ブロックを敷き詰めています。
■田川河川敷のステップ
自然石の割り石をコンクリートで固めたもので、「宮の橋」周辺の遊歩道とステップを覆っています。
■観察から図案化へ
釜川プロムナード「ふれあい広場」の化粧敷石からパターンを導き出す――パターンとして完成されているため、敢えてそれを崩してみましょう。
■オリジナルの試作パターン
釜川プロムナード「ふれあい広場」の化粧敷石から導き出された「幾何学抽象文」。
見る・知るワークショップ「注染の生産現場を体験する」について
[NEWS Vol.5]
参加希望の応募は、去る7月24日(金)をもって締切とさせていただきました。当落にかかわらず、結果は郵送にてご連絡を差し上げましたので(7月25日に発送)、申し込みをされた方は、その到着をお待ちください。なお今回は、15名の枠に対して65名の応募があり、高倍率の抽選となりました。
また、次の市民参加プログラムは、9月以降の開催となり、ただ今、準備を進めております。詳細が決まりましたら、本サイトや新しいチラシにて広報して参ります。
干し場にひるがえる反物、中川染工場にて 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
型に糊付けをする様子、中川染工場にて 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
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見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(3)
[LEARNING Vol.11]
■グループ発表|第2編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
第二のグループ「垣生班」は、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)と田中俊廣さん(宇都宮大学教育学部 梶原研究室 4年)がリーダーを務めました。
このグループが眼を向けたのは、田川の築堤を覆う
- 石垣風コンクリート板
すなわち、河川その他の擁壁工事で、構造材と意匠材を兼ねるコンクリート・パネルです。「宮の橋」周辺で使われているものは、丸い凹凸のある矩形の板が一つのユニットになっており、これを縦横に並べると、自然石を積んだ護岸のように見えます。近寄ると、排水穴などの工夫とともに、経年変化による風合いや雑草にも気づかされます。 - 石(自然)を模したコンクリート(人工)
- 石垣(過去)を模したコンクリート板(現代)
- ユニット単体
- 連続するユニット
には、さまざまな事柄(時間や技術)を読み取ることができ、それらの積層は、そのままパターンを成しています。
「石垣風コンクリート板」以外では、中心市街地にある田川の近代橋としては、最も古く(初代の竣工1886年)、現状で最大級(長さ50.1メートル、幅42.0メートル)の
- 宮の橋(四代目。竣工1995年)
- そのディテール
に関する詳しい報告がメンバーから寄せられました。
その特徴は、新しい橋梁でありながら、 - 県樹トチノキの葉のモティーフ
- クラシックな意匠
で統一されている点です。
事後、プロジェクトの担当学芸員は、「石垣風コンクリート板」の図案化を試み、
- 石垣変わり格子文
を編み出しています。
垣生班の発表 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
石垣風コンクリート板 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
宮の橋の照明 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
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宮の橋の束柱 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
観察から図案化へ 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
オリジナルの試作パターン 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■垣生班の発表
リーダーの一人、垣生 聡さん(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)。このグループが注目したイメージは、「石垣風コンクリート板」です。
■石垣風コンクリート板
自然石を模した凹凸のあるコンクリート・パネル。「宮の橋」周辺の田川両岸に見られます。
■宮の橋の照明
宮の橋の親柱の上に建つランプ型の照明。台座に嵌め込んだレリーフのみならず、照明そのものもトチノキの葉で飾られています。
■宮の橋の束柱
ギリシャ神殿のように並ぶ丸い束柱のベース、アクセントを成す角形の束柱のレリーフもトチノキの葉のモティーフです。
■観察から図案化へ
「石垣風コンクリート板」からパターンを導き出す――ユニットの向きを変え、縦横に組み合わせてみましょう。
■オリジナルの試作パターン
「石垣風コンクリート板」から導き出された「石垣変わり格子文」。
見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(2)
[LEARNING Vol.10]
■グループ発表|第1編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
第一のグループ「福沢班」は、福沢潤或さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士1年)がリーダーを務めました。
このグループが注目したキーワードのなかで、他の班に類例が無かったのは、
- 田川の護岸
すなわち、田川と御用川(人工河川)が合流する地点に見られるコンクリートの擁壁です。
「宮の注染」を育んできた田川は、氾濫を繰り返す「暴れ川」という一面もあり、近世以前から治水工事が行われ、昭和戦後は、流路の見直し、河原の掘り下げ、頑丈な護岸など、大掛かりな改修が成されました。その一つが「田川の護岸」で、自然石の乱積みのように見えますが、人工的に段丘を築き、コンクリートでがっちりと固めた表面に、丸い石を規則的に嵌め込んだものです。段丘にはジグザグに走る小道が設けられ、ゆるやかに下りながら、川べりまで近づくことができます。 - なだらかなジグザグ小道のリズム
- 付随する手すりのアクセント
- 丸石の並び方
- 構造物(産業)と河原・川(自然)の対比
は、造形的にも象徴的にも面白いと言えるでしょう。
「田川の護岸」以外では、旧・日清製粉宇都宮工場(1910~96年)と宇都宮駅を結んでいた鉄道引込線の記憶、わがまちが小麦の集散地だったこと、川の水を利用した製粉所や製麺工場もあったことなど、
- 田川と、染め以外の「産業」の関わり
- そのイメージ
が挙げられました。
あわせて、 - 仙浪水天宮の役瓦(波と鯉のモティーフ)
- 川面に映る押切橋の欄干飾りと波紋
も見どころです。
事後、担当学芸員は、「田川の護岸」の図案化を試み、
- 石垣に横段変わり小径文
を編み出しています。
福沢班の発表 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
田川の護岸 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
仙浪水天宮 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
---|---|---|
押切橋 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
観察から図案化へ 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
オリジナルの試作パターン 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
画像の説明
■福沢班の発表
リーダーの福沢潤或さん(宇都宮大学工学部 安森研究室大学院 修士1年)。このグループが注目したイメージは、「田川の護岸」です。
■田川の護岸
コンクリートに丸石を嵌め込んだ「田川の護岸」。田川と御用川が合流する地点で見られます。
■仙浪水天宮
波と鯉をモティーフにした役瓦。
■押切橋
川面に映る橋の欄干飾りと波紋。欄干飾りのモティーフは市樹イチョウの葉です。
■観察から図案化へ
「田川の護岸」からパターンを導き出す――イメージの拡縮やトリミング、簡略化などを試してみましょう。
■オリジナルの試作パターン
「田川の護岸」から導き出された「石垣に横段変わり小径文」。
考える・手を動かす公開ワークショップの開催
[LEARNING Vol.9]
去る7月19日(日)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の第3回
(3)考える・手を動かす公開ワークショップ「このまちにパターン・デザインを見つける」
が宇都宮美術館 講義室で開催されました。
参加者は30名、聴講者は60名、進行は以下の通りでした。
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)、武村里佳 氏(同社、デザイナー)、工藤功太 氏(同)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 社会人2名、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生・大学生 5名、女子美術大学大学生1名、内田麻美子(宇都宮美術館 非常勤学芸員)
■主催者挨拶
■13:10~13:20 前半のオリエンテーション「デザインとパターン」
■13:20~14:05 グループ・ワーク「宇都宮らしさを見つける」
- 参加者は、グループごとに、黄(自然)と橙(人工)の付箋にキーワードを書き出し、時間軸と地域軸を記した模造紙に貼る。これに、予め用意した写真を貼り加える。
- 聴講者は、三つのグループを自由に見て回り、緑(自然)と青(人工)の付箋にキーワードを書いて貼り加える。
- グループごとに、ピンクの付箋にカテゴリーを書き出し、キーワードのグルーピングを行う。
- グループ・リーダーが全員の前で発表し、さまざまな視点による「宇都宮らしさ」を参加者・聴講者・講師・スタッフで共有する。
■14:35~14:50 休憩
■14:50~15:00 後半のオリエンテーション「パターン・デザインの実際」
■15:00~16:15 個人ワーク「宇都宮らしさを伝える」
- 参加者個々人は、A4下書き用紙と鉛筆を使ってラフ案を考え、方向性をインストラクター役の社会人・学生スタッフと相談。アイディアが固まったら、A5スケッチ用紙とサインペンでパターン・デザイン原画を描く。
- デジタル作業チームの担当学芸員+社会人・学生スタッフは、参加者の原画を次々とスキャンし、スキャン画像をそれぞれパス化。スキャン済みの原画は、グループごとに模造紙の横に貼る。
- 聴講者も、A5スケッチ用紙とサインペンでパターン・デザイン原画を描く。同じく、スキャン→パス化→貼り出し。
- 木村氏とGKグラフィックスのスタッフは、参加者個々人と話し合いながら、パス化データからオリジナルのパターン・デザインを生み出す。作業の様子は、スクリーンにライヴ上映。
■16:15~16:45 講評
完成したパターン・デザインを上映し、木村氏が個別に講評。
■まとめ、終わりのことば
「前半」は、既に終了した「学ぶ講座」(6/21)、「見る・知るワークショップ」(6/28)とのリンクが図られ、わがまちの特質について、「ことば→画像→集約・分析→ディスカッション」を通じて考える、という方法論で、その普遍性を導き出しています。
「後半」は、「個人によるアイディアの提案→プロフェッショナル集団による具現化→講師による完成・評価」を経て、宮モダンのパターン・デザインが幾つも試作されました。
今回の公開ワークショップは、本プロジェクトが目指すところ――多くの人々とともに、デザインの力によって、わがまちを活性化させる、地域資源を掘り起こして、次世代へと継承する、終局的には、優れたパターン・デザインとして発信することのエッセンスを凝縮したものでした。それはまた、9月に予定している「パターン・デザインの公募」の布石となるものです。
なお、本ワークショップの概要は、過去プログラムのフィードバックとして、また、参加できなかった皆さんにも読んでいただけるよう、ひいては、より多くの方々に本プロジェクトに対する興味を持っていただくために、画像を付して連載する予定です。
グループ・ワークのマテリアル | グループ・ワークの様子 | 個人ワークの説明とマテリアル |
---|---|---|
個人ワークの作業の流れ | 個人ワークの完成と講評の様子 | パターン・デザインの実例 |
画像の説明
■グループ・ワークのマテリアル
「ことば→画像→集約・分析」を通じて「宇都宮らしさ」を見つける作業では、付箋、写真、模造紙が用いられました。
■グループ・ワークの様子
「宇都宮らしさ」をめぐるディスカッションは熱気に包まれました。
■個人ワークの説明とマテリアル
「個人によるアイディアの提案→プロフェッショナル集団による具現化」では、A5スケッチ用紙とデジタル機器が用いられました。
■個人ワークの作業の流れ
「個人によるアイディアの提案→プロフェッショナル集団による具現化→講師による完成・評価」は、参加者、聴講者、スタッフによるチーム・プレイで進捗しました。
■個人ワークの完成と講評の様子
ワークショップのクライマックスとなった「講師による完成・評価」は、デザインの制作ノウハウがライヴで上映されました。
■パターン・デザインの実例
参加者(大学生)による原画と完成・上映されたパターン・デザイン「雷・雨」。
見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」|概要(1)
[LEARNING Vol.8]
この記事は、去る6月28日(日)に開催された
(2)見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」
グループ・ワークの概要を、連載で報告するものです。
■グループ・ワーク|第1編
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
全体を括るテーマは「「川とまちの関係・魅力」です。
まず、講師の安森先生から、グループごとに
・まち歩きを通じて見つけ、ポイントごとにリーダーやメンバーの解説によって学んだ事柄
を洗い出し、
・重要なキーワードを付箋に書き出す(今=黄色、昔・思い出=ピンク色)
それらが該当する場所を地図上で確かめ、
・大きな白地図に貼り込む
という作業についての説明がありました。
さまざまな年齢・出自の人々で構成されるグループの作業は、まち歩き同様、とても意義深いものになりました。
リーダーの学生さんは、
・メンバーが撮った画像
を集約してPC上に映し出し、メンバーとリーダーで
・個々のイメージが何なのか、その意味や背景
をめぐって、突っ込んだ意見交換を行っています。
メンバーの方が「わがまち」に関する知識や経験が豊かな場合もあり、若い学生さんにとっては「現場で学ぶ」良き機会になったことでしょう。
一方、学生さんからは「特定の事象」に対する新鮮な視点と意見が出され、メンバー個々人の「新たな気付き」が大いに刺激されたようです。
最終的には、
・宇都宮らしい形・色・デザイン
すなわち「パターン・デザイン」として展開する可能性を秘めた
・キーワード
が精選され、グループごとに全員の前で発表しました。
その際、講師は元より、他のグループのメンバーからコメントや質問が幾つも飛び出し、また、先に開催された「学ぶ講座」(6月21日)、これから行われる「公開ワークショップ」(7月19日)とのリンクも図られ、
・本プロジェクトの主眼である「デザインの力」
――デザイン的な思考で、地域資源を発掘・再生し、まちづくりの糧を見出すことが、全員に浸透したのは確かです。
幸橋から望む田川(北側) 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
安森先生の板書 画像提供=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
一般参加者の取材帳 画像提供=橋本優子(宇都宮美術館) |
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画像の説明
■幸橋から望む田川(北側)
左手(西岸)に見える水門は、釜川からのバイパス下水道の出口です。
■安森先生の板書
ポイントと作業手順が簡潔にまとめられています。
■一般参加者の取材帳
とても丹念に綴られています。このメモが、明日のわがまちに活かされることは、言うまでもありません。
学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(2)-4
[LEARNING Vol.7]
■スライド・レクチャー「デザインの力による地域活性」第4編
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
4. パターン・デザイン
これからのパターン・デザインの創出に向けて、古代から現代まで、さまざまなパターンの事例を紹介しました。
人類の歴史におけるパターンの使用は古く、すでに縄文時代中期の土器や殷朝末期の鼎、古代ギリシャの甕などに、完成度の高い意匠が見られます。その多くは、自然現象を元にしており、人類が生き残るために、ひとは常に、自然の機微を観察しなければならなかったことが窺い知れます。
このような自然に対する畏敬や礼賛の念、その共有意識は、やがて身体や道具に施す装飾へと発展しました。したがってパターンは、地域固有の自然観、そしてそこから育まれた美意識の現れとも言えるのです。しかし、20世紀に進行した近代化の過程で、大量生産を前提に誕生したモダン・デザインは、生産効率やさまざまな仕向地の嗜好性に応えなければならなかったため、パターン・デザイン、すなわち地域の固有性を顕在化できないまま発展を遂げ現代に至りました。
そして21世紀を迎えた現在、情報通信技術の発達は、生産や流通に大きな変化をもたらし、再び、地域それぞれの価値観に合わせたものや仕組みづくりが可能になりつつあります。このタイミングこそ、市民の皆さんと、地域の魅力を伝えるパターン・デザインを再考し、具体的活用の可能性を探れるのではないかと期待しています。
ギリシャ時代の貯蔵用の甕 紀元前700~650年|大英博物館蔵 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
写本のイニシャルの装飾 12世紀|プランタン・モレトゥス印刷博物館蔵 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
嵯峨本 光悦本謡曲『善知鳥』 17世紀初頭|個人蔵 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
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考える・手を動かす公開ワークショップについて
[NEWS Vol.4]
ワークショップ参加希望の応募は、去る7月10日(金)をもって締切とさせていただきました。当落にかかわらず、結果は郵送にてご連絡を差し上げましたので(7月11日に発送)、申し込みをされた方は、その到着をお待ちください。
当日の聴講は、事前申込が不要ですので、会場まで直接お越しいただければ幸いに存じます。
トチの葉をモチーフにしたスケッチ 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
夏の日差しを浴びる県樹トチノキ 画像提供=柳 紘司 氏(宇都宮大学 安森亮雄研究室) |
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宇都宮大学 梶原良成氏からのメッセージ
[MESSAGE Vol.3]
皆さん、こんにちは。本プロジェクトで、子どものための地域デザイン教育を担当する梶原良成です。
「美術作品ってどこにあるの」と問われたら、多くの人が美術館を思い浮かべるでしょう。しかし、美術館で出会う作品は、時間や場所から切り離された美術であり、私たちの暮らしのなかで、いま生きている美術ではないのです。これに対して、美術館がまちへ飛び出し、生活の場に豊かさや奥行きをもたらすという美術本来のあり方を見つけ、その役割を確かめながら、地域固有の形や空間を再発見し、まちの将来を創造する手掛かりを探る本プロジェクトは、大きな意義があると考えています。
美術館で接する作品は、周囲とは無関係に、単独で存在するかのように捉えられがちです。一方、まちに存在する美術は、「これが作品です」と明示されていません。よって私たちは、自身の五感をフルに活用し、時間の経過、重層する空間に美術を見つけることになります。よく観察すると、さまざまな関係性のなかで作品が成り立っていることに気付くでしょう。人類の歴史における「美術」は、まさに人と社会のつながりを形として生み出す活動から始まりました。今日で言うところの「アート」より「デザイン」に近いものだったのです。
「地域産業とデザイン」をテーマに、「宮染め」にスポットを当てる本プロジェクトは、それを育んだ気候・風土・時代・背景を読み解く視点で「宇都宮」に注目し、地域文化の表象を成してきた「パターン=もよう」に着地させ、次世代に継承していく試みです。子どものための地域デザイン教育では、ワークショップ体験を通じて、子どもたちが「まち」に「場」と「美術」の関係を発見し、未来への展開を感じて欲しいと願っています。
皆さんと一緒に、かつてないプロジェクトを成功させたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
ワタ日記|2015年7月8日
[LEARNING Vol.6]
皆さんは「岡木綿」という言葉をご存じでしょうか。今日の栃木県真岡市周辺に産した白い木綿地のことです。手紡ぎ・手織りの緻密な生地で、単に丈夫であるのみならず、質の高さでも全国に知られていました。その最盛期は、江戸時代の文化・文政年間(1804~30年)。明治時代になると、国内外の機械織り製品に圧倒され、やがて衰退を余儀なくされますが、往年のブランド力にあやかって、他地域のものであっても「岡木綿」と称したり、「特岡」(最高級品)の名称が今なお用いられています。これこそ、注染の中形(浴衣)や足袋などに適した布なのです。
今回のプロジェクトでは、わが県の特産だった「岡木綿」に対する見識を多角的に深めるために、ワタ(木綿)栽培の取材も進めています。日付を少し遡って、5月10日には、真の「岡木綿」の再生に尽力してきた真岡木綿会館を訪ね、5月24日は、益子町で日下田藍染工房を主宰する日下田正さんの畑で、ワタの種蒔きに参加しました。どちらの機会に於いても、ワタと木綿の染織文化に関する貴重なお話を伺い、その後、真岡木綿会館でいただいたワタの種を、プロジェクト・メンバーがそれぞれに育てています。
染織工芸・産業の原料である「ワタ」は、「アオイ科ワタ属」に分類される野生種・栽培種の実がもたらす「綿毛」を繊維にしたもので、元来は熱帯や亜熱帯の植物でした。種蒔きは20℃、生育も平均25℃以上の気温が求められ、かつ日当たり、水はけ、風通しの良さも不可欠です。と記すならば、梅雨もあり、冬が寒い栃木県は、ワタ栽培の北限に近く、こうした土地で、わたしたちの先祖が「岡木綿」を育んだことは特筆に値する、として良いでしょう。
画像の説明
■白和綿と茶綿
日下田藍染工房(芳賀郡益子町)にて。綿毛でいっぱいの実をつけたワタを自然乾燥させています。左の白いワタは、地域の伝統種(真岡木綿。益子木綿とも)、右はワタの原種で、綿毛が茶色味を帯びています。
■種蒔きの朝
ワタの種(白和綿)を2~3時間(種類・場合によっては一晩)、水に浸しておきます。発芽を促すためです。種蒔きは、最低気温が20℃を上回る5月上旬~中旬がベスト。
■水を切って灰をまぶす
水に浸けた後、やはり発芽が良くなるよう、灰をまぶします。こちらは、種蒔きの準備が整ったワタの種(茶綿)。
■畑の地蒔き
日下田さんのワタ畑にて。一箇所に数粒の種を浅く蒔き(深さ2~3cm程度)、上からそっと土をかぶせます。植木鉢やプランター、ポットの場合も、数粒の浅蒔きで。
■畝が続くワタ畑
日下田さんのワタ畑では、原種、日本と外来の栽培種など、畝ごとに違う種類のワタを栽培しています。穴と穴の間隔は、およそ50cmが目安。発芽したら、様子を見ながら間引きます。植木鉢やプランターによる栽培も同じで、ポットの場合、元気が良い苗を選んで畑に植え付け。
■東京で育つ真岡木綿
種蒔き後、凡そ一週間(環境によっては10日)で発芽し、双葉が顔を覗かせます。こちらは、真岡木綿会館で分けていただいたワタの種を、アート・ディレクターの木村さんが都内で育てているもの。
学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(2)-3
[LEARNING Vol.5]
■スライド・レクチャー「デザインの力による地域活性」第3編
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
3. 地域デザインから学ぶ
岐阜県飛騨市のプロジェクトを実例に、デザインの基本的な考え方から、シンボルマークやタイプフェイス、名刺やサインなど、具体的なアイテムへと展開していくプロセスを紹介しました。
飛騨市 は、2004年(平成16)2月、4つの町村が合併して生まれた人口約30,000人のまちです。
市のデザイン・アドバイザーとして関わった私は、地域の風土や歴史から導き出した市章の考え方や、統一的な色彩、文字などの設定を行いました。とりわけこの計画では、新しい組織(飛騨市)から内外に語りかける「ことば」の視覚化――文字の選定と制御に注力し、時間をかけて、独自の視覚的な印象をかたち作ることに成功しました。
このようにデザインは、流行や一時的な目新しさを求めるのではなく、「確固たる文脈」を築き、細部に及ぶ「造形的な精度」を高めることによって、時の経過にあっても色あせない成果に至る手法とだと捉えています。
飛騨市市章 飛騨市|2004年(平成16) 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
文字の音韻処理による認識 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
飛騨市役所窓口サイン 飛騨市|2004年(平成16) 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
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学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(2)-2
[LEARNING Vol.4]
■スライド・レクチャー「デザインの力による地域活性」第2編
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
2. GKデザインの仕事
私が所属するGKデザイングループ
の仕事を紹介しながら、デザインの世界の広がりや可能性を皆さんに感じていただきました。
GKは、1952年(昭和27)、東京藝術大学の小池岩太郎教授の指導の下、数名の学生によって作られたデザイン組織から始まりました。初期の仕事は、ヤマハのオーディオやヤマハ発動機のモーター・サイクル、キッコーマンの卓上しょうゆ瓶など、工業デザインを主体に行っていました。その後「ひととモノ(道具)の最適な関係」をテーマに掲げ、デザインの対象を交通システムや都市、情報へと拡げてきました。
現在は、国内外200名を越えるメンバーが在籍し、領域を越えた新たなデザインのあり方を探求しています。
しょうゆ卓上瓶 野田醤油株式会社|1961年(昭和36) 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
JR東日本サイン計画 東日本旅客鉄道株式会社|1989年(平成1)~ 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
化粧品シリーズ「HERA」 アモーレパシフィック社|1996年(平成8) 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
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学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(2)-1
[LEARNING Vol.3]
この記事は、去る6月21日(日)に開催された
(1)学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」
スライド・レクチャーの概要を、連載で報告するものです。
■スライド・レクチャー「デザインの力による地域活性」第1編
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
1. アートとデザイン
本プロジェクトでは、デザインとは何かを理解し、その特性を十分に活用しながらプログラムを遂行することが重要だと考えています。アートとデザインは導き出される「成果」こそ似ているかも知れませんが、まったく別のものです。
アートとは、基本的に情報(メッセージ)の発信者と制作者が「同一」で、個人または集団による「表現」を目的とし、その成果が「作品」として生み出されるものです。
一方、デザインとは、情報の発信者と制作者は別に存在し、発信者の意図や思いを色やかたちに「翻訳」して第三者に伝達するものです。ですからデザイナーの役割は、翻訳者のようなものであると考えています。海外の小説が翻訳者の能力よって伝わり方や魅力が変わるように、デザイナーの力量によって情報の伝わり方も大きく変化します。
今回は、デザインの視点で、参加者の皆さんと宇都宮を観察し、パターンの開発を通じて、多くの人々にまちの魅力を伝えることができればと思っています。ひいては、新しいパターンがこのまちの「文化の拠りどころ」となり、地域に対する意識の高まりを刺激するところまでつなげたいと考えています。
アートとデザインの基本的な違い 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
本計画の構造 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
デザイナーの役割は翻訳者 画像提供=木村雅彦 氏(GKグラフィックス) |
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見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」の開催
[NEWS Vol.3]
去る6月28日(日)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の第2回
(2)見る・知るワークショップ「田川と染めのまちを探訪する」
が田川、釜川、旧・求喰川の市内流域、及び宇都宮市中央生涯学習センター202・203号室で開催されました。
参加者数は30名、進行は以下の通りでした。
■10:00 田川河畔「ちびっこ広場」集合
[講師] 安森亮雄 氏(宇都宮大学工学部准教授)、宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生4名、同大学教育学部 梶原研究室大学生3名、垣生 聡 氏(宇都宮市都市整備部都市計画課 主任)、橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
[スタッフ] 宇都宮大学工学部 安森研究室大学院生1名、小堀修司(宇都宮美術館 学芸員)
[特別ゲスト] 中川ふみ 氏(中川染工場専務取締役)
[特別参加] 飯塚 博 氏(下野新聞社 宇都宮総局長・論説委員)
■10:15~12:00 午前のまち歩き
- 大錦橋から幸橋までの田川流域
- 東塙田の旧・求喰川遺構
- 旧・篠原家住宅
■昼食・休憩
■13:30~15:10 午後のまち歩き
- JR宇都宮駅
- 宮の橋から洗橋までの田川流域
- 新釜川橋から新橋までの釜川流域
- 一番町、二番町、三番町、二荒町の旧・求喰川遺構
■休憩
■15:30~17:00 ワークショップ(宇都宮市中央生涯学習センター)
- グループ・ワーク
- 発表と講評
「午前のまち歩き」では、大錦橋、中川染工場、大泉橋、石の蔵(レストラン)、田川と御用川の合流地点、天王祭の祠、旧・求喰川に架かっていた橋の束柱(宇都宮市立東小学校の南)、東橋、仙浪水天宮、釜川からのバイパス下水道、芳宮山清巌寺、幸橋、旧・篠原家住宅を訪ね、予定よりも早いペースでJR宇都宮駅西口に到着しました。
午後の部は、田川と密接に関わるJR宇都宮駅、宮の橋、新洗堰、ふくべ灯籠流し、押切橋、旧・中川染工場のあった場所(押切橋南東詰め)、青源味噌、福井染工場、洗橋などに関する知見を深めた後、同じ水系の釜川が流れるエリア――釜川プロムナードに入り、新釜川橋、厩橋、おしどり塚公園、三峯神社(一番町)、旧・求喰川跡(生活道路)、元古久稲荷神社、エバマン染物店、今小路橋、井登橋、剣橋、あさり川こみち(旧・求喰川支流跡)、出雲橋、御橋、割烹中村、修道橋、かつて水車が回っていた地点(修道橋付近)、新橋を巡っています。
宇都宮市中央生涯学習センターでは、「川とまちの関係・魅力」というテーマで、5つのグループごとに見聞した事柄を話し合い、重要なキーワードを付箋に書き出して(今=黄色、昔・思い出=ピンク色)、大きな白地図に貼り込みました。最終的には、それらのなかから「宇都宮らしい形・色・デザイン」を検討し、発表と講評で締め括っています。
なお、本ワークショップの概要は、過去プログラムのフィードバックとし て、また、参加できなかった皆さんにも読んでいただけるよう、ひいては、より多くの方々に本プロジェクトに対する興味を持っていただくために、画像を付して連載する予定です。
当日のルート・マップ 地図作成=宇都宮大学 安森亮雄研究室 |
仙浪水天宮 日本古来の水神・弥都波能売神 (ミヅハノメノカミ)がご祭神 |
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押切橋 橋の欄干飾りから望む田川の流れ |
釜川プロムナード 河畔に設置された「リバーテラス」にて |
宇都宮市中央生涯学習センター グループ・ワークの様子 |
グループ・ワークの成果 宇都宮らしい形・色・デザインの源泉は、 大谷石に求められることが分かりました |
宇都宮大学 安森亮雄氏からのメッセージ
[MESSAGE Vol.2]
皆さん、こんにちは。本プロジェクトで、建築・都市の調査と展覧会場の設計を担当する安森亮雄です。
いま、デザインは、それを取り巻く「フィールド」との関わりが、とても大切になっています。かつては、経済成長のなかで、均一な物を効率よく量産したり、また、資本主義や情報社会が進むなかで、個性や差異を際立たせる形をつくった時代がありました。そこでは、物や建築のデザインを土地や場所から切り離すことが、自由度を広げることを意味していました。しかし現代では、成熟社会を迎え、地球環境や人口減少などの問題を背景に、物が作られる場所や、用いられる素材、場の気候風土、生産から使用までに関わる人々などを含めて、デザインの意味を問い直す必要が生じています。それらの総体としての「フィールド」のなかでデザインを捉え直し、さらに、物が生まれ使われる「フィールド 自体」をデザインすることも重要になっています。
そういう現代において、「地域産業とデザイン」をテーマとする本プロジェクトは、まさに時機を得たものです。宇都宮という「フィールド」で、田川の水系や、発達した交通、都市の文化のなかで育まれ、近代産業と手工業の両側面をもつ「宮染め」に焦点を当て、都市空間と地域産業の関わりを調査します。まちを丹念に歩くフィールド・サーベイを通じて、物が生まれる背景を理解し、また、物自体を注意深く観察することで、それが生み出された都市空間に遡る――双方向の回路によるデザイン理解の方法です。このプロセスを未来に向けることは、宇都宮の新しい「染め」のパターンを生み出す創造の方法にもなります。そして最終的には、布を用いた展示空間で、これらの成果物をお見せします。
美術館を飛び出し、皆さんとの協働で実現される本プロジェクトを、どうぞ宜しくお願いします。
学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(1)-2
[LEARNING Vol.2]
■スライド・レクチャー「染めの街うつのみや」後編
[講師] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
2.石の街は「染めの街」――宮染めと「宮の注染」(前編に続く)
近現代に於ける「中形」(浴衣)と「注染」の発展は、不可分の関係にあります。
浴衣という衣装、型紙を用いる藍染めは、江戸年間から受け継がれてきましたが、明治時代になると、「長板」(技法)の「中形」(衣装)が主流となります。木製の板に木綿生地を張り、その上に型紙を乗せて、餅米粉・石灰・糠を原料とする糊で防染し、型紙を横へずらしながら、反物に文様を連続させる。更に生地をひっくり返し、裏側も同じ手順で型付けを行ってから、反物を藍甕に浸ける(浸染)「長板」は、非常に手が込んだ技法です。色合いは、藍(と白)の単色。ちなみに「中形」とは、本来は文様の大きさを指し、やがて柄に関係なく、衣装(浴衣)の名称に変化しました。
一方、生地を折りたたんで(型紙を乗せて防染し、同じ幅で生地を折りたたみ、型付けを繰り返す)染料を注ぐ「注染」は、1880年代末~1890年代初め(明治20年代)に大阪の堺で考案され、それまでの「長板」に比べると、手間が省け、量産も可能なことから、当初は手拭に重用されました。そして、この画期的な技法を学ぶべく、全国の染め職人が大阪へやって来ます。東京へ戻った者は、注染による中形(浴衣)を研究し、「阪注」(大阪注染)に勝る品質・図案の製品を大正時代に編み出したのです。同じ頃、型付けした生地に、刷毛で染料をすり込む「風光染」も流行し、色や柄が華やかさを増しますが、注染とは異なる片面染め(プリント)でした。
昭和時代は、第二次世界大戦期・戦後復興期の「綿統制」(1938~50年)で分断されながらも、 注染が隆盛を極め、昭和初期、並びに高度成長の1950年代~1960年代前半(昭和20年代後半~昭和30年代)に二つの黄金期を築いています。意匠的には、昭和戦前に於ける斬新な「モダン柄」の登場が特筆に値します。戦後は、図案集や見本帳の発行、展示会の開催も活発となり、モダン柄のリヴァイヴァルとともに、同時代のグラフィック・デザインと接点が見られるスタイル(幾何学抽象やイラストレイティヴなもの)が花開きました。業界の動きとしては、1954年(昭和29)に、「浴衣」という統一の表現を使うようになったことや、最盛期の東京オリンピック(1963年)前後、3反=1,000円の値段で、一日=2,000反もの売り上げがあった(松坂屋上野店)状況が挙げられます。
この他、わが国の木綿産業の世界躍進を導いた無停止杼換式豊田自動織機の発明・完成(1924年)と、大谷石建造物の新世紀を拓いた旧・帝国ホテル ライト館の竣工(1923年)が時を同じくしている事実も、「石のまちは "染めのまち"」を語るうえで、見落とせない話題です。
画像の説明
■中形(浴衣)の色と柄
本来は「文様の大きさが中程度」の製品を指していましたが、細かいものや大柄を含めて、「型」を用い、木綿地に「藍と白」で図案を表すのが伝統的な中形(浴衣)。染めは浸染や注染、柄付けも長板や籠染など、技法のヴァリエーションは豊富です。「浴衣」という名称の統一は、1954年(昭和29)から。
画像は中形反物(ともに鈴鹿市伝統産業館蔵)。
■加賀友禅と江戸小紋
どちらも染めの絹(呉服)。同じ染めでも木綿(太物)の中形とは、かなり異質なのが一目瞭然です。
画像は、上が加賀友禅の反物(石川県立伝統産業工芸館蔵)、下は江戸小紋の着物(橋本優子蔵)。
■江戸年間の型紙
中世以前から存在した型紙が、江戸時代に白子(三重県鈴鹿市)で発展したのは、紀州藩の保護を受けたことによります。
画像は、1695年(元禄8)の伊勢型紙(鈴鹿市伝統産業館蔵)。
■明治・大正年間
明治期は「単色の長板」が主で、江戸小紋(絹)の影響により、文様が徐々に細かくなりました。長板とは、板に生地を張り、表面の端から型付けを行い、裏側も同様に型で柄を施した後、藍甕で浸染する技法。大正期になる と、型を使い、刷毛で染料をすり込む「風光染」(片面のみ染める)が流行します。色数も増し、人工染料が多用されるようになりました。
画像は、明治期の注染図案(オコシ型紙商店蔵)。
■江戸好み・伝統の四色
紺(こん)、薄(うす)、鼠(ねず)、藪(やぶ)を指します。
■無停止杼換式豊田自動織機(G型)
1924年(大正13)に発明・完成。生産性、製品の品質を画期的に高め、昭和戦前にはメイド・イン・ジャパン綿布の輸出量を世界一に導きました。
画像は、トヨタ産業技術記念館にて撮影。
■旧・帝国ホテル ライト館
1923年(大正12)に竣工。鉄筋コンクリートと組み合わせることで、大谷石建造物の新時代を拓きました。
画像は、1967年(昭和42)の解体直前に撮影。
■昭和戦前
1880年代末~1890年代初め(明治20年代)に大阪の堺で考案された注染は、大正期に全国へ広まり、東京では反物化も模索。昭和戦前は、技法の特性が斬新な図案と出会い、第一黄金期を謳歌します。
画像は、昭和戦前の注染図案(オコシ型紙商店蔵)。
■昭和戦後
時局の悪化で、綿統制が敷かれた1938~1950年(昭和13~25)の間は、木綿産業が完全に寸断。これが解禁となった1951年(昭和26)以降、戦前期の図案の復刻や、さらに当世風の柄も生み出され、注染は第二黄金期を迎えます 。
画像は、昭和戦後の注染手拭図案(中川染工場蔵)。
■昭和戦後の注染図案と型紙
左の図案は、幾何学抽象のコンポジションで、同時代のグラフィックとの連関が窺われます。右の型紙は、戦前に一世を風靡したアール・デコを彷彿とさせます(ともにオコシ型紙商店蔵)。
学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」|概要(1)-1
[LEARNING Vol.1]
この記事は、去る6月21日(日)に開催された
(1) 学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」
スライド・レクチャーの概要を、連載で報告するものです。
■スライド・レクチャー「染めの街うつのみや」前編
[講師] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
- 本プロジェクトの概要について
「プロジェクトについて」をご覧ください。
- 石の街は「染めの街」――宮染めと「宮の注染」(前編)
明治・大正・昭和戦前・高度成長時代の宇都宮に焦点を当て、栃木県の県庁所在地、交通(鉄道)・物流の要衝、産業のまちとして発展を遂げるなかで、市内を流れる田川の豊かな水が「染め」に適するため、木綿と絹の染色、技法的には浸染・引染・注染などを網羅する「宮染め」が興隆した状況を紹介しました。
まず、明治時代は、田川の市内下流域、とりわけ旭橋(現・押切橋)付近や、同じ水系の釜川、求喰川(あさりがわ。現在は完全に暗渠化)を擁する街中に、多くの染色業者が軒を連ねたこと。大正末期から昭和初期(昭和12年まで)にかけて、注染の生産が伸び(宮染めの第一黄金期)、素材(生地・染料・型紙)と市場を結ぶ技術の高さを誇り、流通の中枢にあって、中形(浴衣)・手拭で全国的に名を馳せたこと。これが、関東大震災(大正12年)に伴い、やはり地域産業として知られる大谷石の需要増加、モダンな大谷石建造物の登場と一致する、という興味深い指摘。そして、第二黄金期とされる高度成長時代(昭和26年以降、昭和39年前後まで)に、より新しい図案の製品が流行したことなど。
中形(浴衣)と注染の略史に関しては、後編に続きます。
画像の説明
■注染の夏
高い干し場は水洗いされた無垢の反物、敷地いっぱいに染め上がった色とりどりの浴衣地が翻る中川染工場(宇都宮市錦1-562)。
■田川と染め
宇都宮空襲によって中心市街地が被災するまで、中川染工場は田川の市内下流、染物工場が多く立ち並ぶ宮の橋以南にありました。現在は、同じ田川の市内上流で、「宮の注染」を育んできた川の水を工場内に引き、手仕事による生産を続けています。
■大谷石蔵
今日の中川染工場にある大谷石蔵は、かつての陸軍関係の施設遺構と言われています。宇都宮で「染め」と「石」の文化が輝いた時代は、見事に一致しているのです。
■明治末期
田口浪三 編『宇都宮商業地図』(明治40年)より、旭橋(現・押切橋)から石橋(現存せず)にかけての商工業者分布。「染め」とともに、「川の水」と関わる生業が多いことが分かります。
■大正時代
戦前の観光絵葉書より、「宮の橋」西南詰めから東(停車場)を望む。初代の橋は、宇都宮駅開業の翌年に竣工(明治19年)、大正期には鉄骨造となりました。
■昭和戦前
関東大震災(大正12年)以降、昭和戦前にかけての宇都宮は、商工業と産業文化が輝く「モダンなまち」でした。その証の一つが、今は無き旧・宇都宮商工会議所の建物(竣工・昭和3年、設計・安 美賀)です。
■平成時代
押切橋から田川を南に望む。現在、流域で染色業を営んでいるのは、中川染工場、洗橋に近い西側河畔の福井染工場、釜川のほとりのエバマン染物店の三軒です。
■注染
注染とは、量産の考え方も持つ日本独自の近代的な手工業制地場産業です。背景画像は、昭和戦前の注染型紙(中川染工場蔵)。
■宮の注染
宮の注染は、全国の織(生地)・染(染料)・型(型紙)・市場(顧客)を「染めの技術力」「地の利とまちの活力」で結んだ地域の糧でした。背景画像は、高度成長期の注染浴衣図案(オコシ型紙商店蔵)。
学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」の開催
[NEWS Vol.2]
去る6月21日(日)、本プロジェクトで展開する「市民プログラム」の初回
(1) 学ぶ講座「宮の注染とデザインの力を学ぶ」
が宇都宮大学UUプラザ2階 コミュニティ・フロアで開催されました。
参加者数は106名、進行は以下の通りでした。
■主催者挨拶
■スライド・レクチャー「染めの街うつのみや」
[講師] 橋本優子(宇都宮美術館 主任学芸員)
- 本プロジェクトの概要について
- 石の街は「染めの街」――宮染めと「宮の注染」
■スライド・レクチャー「デザインの力による地域活性」
[講師] 木村雅彦 氏(GKグラフィックス取締役、デザイナー)
- アートとデザイン
- GKデザインの仕事
- 地域デザインから学ぶ
- パターン・デザイン
■休憩
■質疑応答
第一のレクチャー「染めの街うつのみや」では、明治・大正・昭和戦前/戦後の宇都宮に於ける産業の盛り上がりと地域文化の開花、その輝きの立役者が「染物」だったこと、もう一つの地域資源である「大谷石」とも結び付いていることなど、「宮の近代」にデザイン・建築史の視点から光を当てる講義でした。
二つ目のレクチャー「デザインの力による地域活性」は、思想・創造活動としてのデザインの定義から始まり、講師が所属するデザイン事務所の歴史と成果、なかでも、地域(行政・市民)とデザイナーが協働することで、どのように「まち」が活き活きとより良いものになるのか、その実例紹介、そして本プロジェクトの勘所であるパターン(文様・図案)の意味、生み出され方まで、非常に緻密で濃い内容でした。
質疑応答も熱気が溢れ、参加者の意気込み、プロジェクトを預かる側の思いがお互いに伝わる貴重な時間だった、としてよいでしょう。
さらに、二人の講師がそれぞれ持参した「コミュニケーション・デザインに関わる資料」「各地の手拭い」により、会場内に「ミニ展示」を設置。休憩時間や講座の終了後、参加者は手に取って見入っていました。
なお、両レクチャーの概要は、過去プログラムのフィードバックとして、また、参加できなかった皆さんにも読んでいただけるよう、ひいては、より多くの方々に本プロジェクトに対する興味を持っていただくために、画像を付して連載する予定です。
アート・ディレクターからのメッセージ
[MESSAGE Vol.1]
皆さん、こんにちは。本プロジェクトでアート・ディレクターを務める木村雅彦です。
美術館とは、「美術品」を収集・保存、調査・研究し、それを展示や教育普及活動によって、市民の皆さんと共有する機関ですが、そうした施設が館外に出て、その実質的な役割(つまり「美」によって人々の「暮らし」を豊かにしていくこと。「美」によって「まち」の性質を高めていくこと)を拡げられる試みは、とても素晴らしいと思います。
私は、日本の地域の問題について興味を持っており、いくつかのプロジェクトに参加してきました。私の場合、できるだけ丹念に地域の固有性を調査し、現代、そして未来へつながる資産に結びつく「普遍性」や「品位」を追求しています。しかし、多くの計画は、「地域の固有性(歴史的な文脈や風土)」とは無関係、あるいはその直喩的な解釈による、いわゆる「ゆるキャラ」や、「個的な表現」によるアート、デザイン、建築によるもので、短期的な効果を得ることができたとしても、長期的な視点で考えると、自らの首を絞める状況に陥っていると感じています。これに対して今回のプロジェクトでは、宇都宮美術館の新たなアプローチに「次なるデザインの可能性」を示すことができると思い、お引き受 けさせていただきました。
パターンを開発することによる地域計画は、とても新しい視点です。
パターンというものは、文字よりも歴史が古く、古代からコミュケーションのための道具として活用されてきました。また、パターンは、対象に合わせてさまざまな形に変化する柔軟性を有し、展開できる可能性がとても大きいと思います。
ぜひ、皆さんと一緒に、この新しい試みを成功させたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い申し上げます。
チラシ第1号の表紙デザイン
[NEWS Vol.1]
本プロジェクトのチラシ第1号(A3二つ折り・全4ページ)の表紙をご紹介します。 デザインは、GKグラフィックスの木村雅彦氏と工藤功太氏により、「昭和時代の注染型紙」(中川染工場蔵)を背景に用いています。 なお、木村氏を講師にお招きし、来る6月21日(日)に開催される「学ぶ講座 《宮の注染とデザインの力を学ぶ》」(於・宇都宮大学UUプラザ)では、参加者の皆様に本チラシをお配りいたしますので、どうぞお楽しみに。