TOPICS007:サヴィニャックとともに旅を その① 14.04.2018

あと二週間もすると、ゴールデンウィークがやって来ます。日本の場合、盛夏の長期ヴァカンスよりも、体感的に心地良い4月末から5月初めの一週間に、ちょっとしたエクスカーションへ出かける人々で賑わい、それを心待ちにしている皆さんも多いことでしょう。もちろん、近所や自宅でのんびりと過ごす、書物その他の媒体を通じて、イメージの中の旅を無上の喜びとする方々もおられると思います。
そんな多様な休日・余暇の過ごし方の一つとして、本展を機に、ぜひ「サヴィニャックとともに旅を」楽しむことを味わっていただければ、この上ない幸いです。
たとえば、ヨーロッパの地図に、1個の古めかしい旅行鞄があしらわれたパンフレット。大陸を囲む海の青は、そのまま鞄の張り地となり、対比的な白の地形が「鞄を彩るステッカー」に見える時、私たちはすでに、サヴィニャックが生み出した「旅の世界」に入り込んでいます。陸地(国)で唯一、黄色でマーキングされた場所を、「目的地(デスティネーション)」と意識する者は外国人、逆に「出発地」と感じるのはフランス人、として良いでしょう。文字情報に目を向けると、フランス語で「夏の外国旅行 1935年|ワゴン=リ/クック パリ代理店…(以下、パリ市内の5つの店舗住所・電話番号)」と記されています。
以上の絵柄・文字から、このパンフレット「夏の外国旅行」(1935年)は、実は「フランス人を外国(白地図上のどこか)」誘うもので、対象地域は北アフリカや小アジアまで及び、当時の著名な鉄道事業者「コンパニー・アンテルナショナル・デ・ワゴン=リ(CIWL:国際寝台車会社。創業1872年、ベルギー)」と、その傘下にあった旅行代理店「トーマス・クック&サン社」のプロデュースによる、という内容を読み取ることができます。
ちなみにCIWLと言えば、小説や映画のテーマに取り上げられ、1920年代~1930年代の時代精神を物語る豪華国際寝台急行「オリエント・エクスプレス

の運行母体として名を馳せました。また、世界初の旅行代理業で、1928年、CIWLによって買収されたトーマス・クック(創業1841年、イギリス)も、ドイツ資本の親会社を経て、21世紀に再びイギリス企業となり、そのブランドは広く知られています。
サヴィニャックの業績においては、巨匠A.M. カッサンドル(1901~68年)のアシスタントを務めながら、フリーランスの活動を展開したばかりの最初期(27歳の頃)に手がけたエディトリアル・デザインの仕事です。(続く)

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当館での本展は、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)に広報面で多大なご協力をいただいています。4月1日から開催が始まった「栃木デスティネーションキャンペーン」に合わせて、きれいにリニューアルされたJR宇都宮駅西口の掲示板には、展覧会のポスターチラシも登場しました。

新幹線・在来線の両改札からすぐの場所で、美術館行きのバスへ足を向け、タクシーご利用の際にも必ず目に触れると思いますので、印象的な「」をご覧になられたら、「サヴィニャックとともに旅を」思い起こし、ご来館くださいますようお願い申し上げます。
なお、JR東日本「大人の休日倶楽部」会員の皆さんは、こちらもお読みください(特典あり)。

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