TOPICS002:《牛乳石鹸モンサヴォン》をめぐるエピソード その②――ヴィルモとの二人展 05.04.2018

数あるサヴィニャックのポスターのなかでも、知名度とヴィジュアル・インパクトの高い《牛乳石鹸モンサヴォン》(1948/1950年)は、その誕生が一種の「デビュー神話」として語り継がれています。まず、このポスターの「原画」を手がけた当時のサヴィニャックは、さまざまな苦節を味わった1920年代~1930年代を経て、フランスの化粧品メーカー「ロレアル」のグループ企業で、広告代理店の「広告コンソーシアム」にデザイナーとしての地位を得たものの、退職を余儀なくされたばかりでした(在職1943~47年)。そんな状況にあって、年齢が近い同業の友人ベルナール・ヴィルモ(1911~89年)と再会したサヴィニャックは、ヴィルモのほか2名のクリエイターが共同で借りていたアトリエ(パリ1区ダニエレ・カサノヴァ街)に転がり込みます。
そして、フリーランスの立場では、新旧クライアントへの訴求、また、インハウスの職を求めるために、ひたすらポスター原画を描く、という活動を続けながら、ヴィルモの提案により、二人展ヴィルモとサヴィニャック ポスター展」(パリ、メゾン・デ・ボザール。1949年5月20日~6月4日)を開催しました。その会場に並んだのが、のちに《牛乳石鹸モンサヴォン》(ポスター)となった「牛」(原画)であり、これに着目したのは、ロレアルと広告コンソーシアムの創設者にして、数年前にサヴィニャックを馘にしたウージェーヌ・シュレール(1881~1957年)だったのです。こうして「サヴィニャックの“牛”」は、正式にロレアルの、すなわち「モンサヴォン石鹸の“牛”」として世の中にお目見えします。(続く)

※この連載トピックスの第一回も、ご一読ください。また、サヴィニャックの詳しい生涯年譜は、こちらをご覧ください。
※取材協力=練馬区立美術館

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