本展の展示を紹介する記事でも触れた通り、この聖堂は同時代の画家を魅了してきました。
[下図]モティーフの建造物(画面左)は新潟カトリック教会聖堂です
とりわけ「池の畔に佇む聖堂」は定番のアングルとして、観光絵葉書にも登場します。当時、池は「異人池」と呼ばれ、明治10年代(1870年代末)から昭和20年代末(1950年代前半)まで、敷地の南西(新潟県新潟市中央区西大畑町)にありました。その出現については、付近で砂の採掘をした際に水源から湧水(明治10年代初め)、あるいは東大畑(中央区東大畑通一番町)における教会施設の建設に伴って井戸から噴水(明治18年)したことのいずれかとされます。
その後の都市化により、池は埋め立てられて消滅しました。しかし、高さ22メートル近い双塔が南東正面に聳える聖堂の姿は昔も今も変わりません。
建物の造りは、教会建築の伝統に即した十字架形平面(バシリカ)で、北西の内陣、その後ろに張り出す後陣、北東・南西軸の翼廊、これに直交する三廊式身廊、南東の玄関間、二つの塔屋で構成されます。
身廊入口側と玄関間の階上には、ギャラリーが迫り出しています。
内陣、翼廊の手前に下がる半円アーチの垂れ壁は、空間を明確に分節し、平天井を高く見せる視覚効果があります。往年は会衆席が椅子式ではなく、薄縁を敷いた板張の床に座ったので、いっそう高さが感じられたことでしょう。
玄関と左右入口の周囲の造り、ほとんどの窓の形状は半円アーチにより、これらの連続のなかに、意匠上のポイントを添えるのが正面の薔薇窓、翼廊、内陣、後陣の丸い高窓にほかなりません。
かつて内部の漆喰は、天井が白、壁は淡黄色で、上方から射し込む光を念頭に置き、崇高感を演出するための工夫と考えられます。
新潟カトリック教会聖堂の建造物概要
●今日の名称(所在地)
カトリック新潟教会聖堂(新潟県新潟市中央区東大畑通一番町)
●年代
聖別1927年(昭和2)
●設計・施工者
マックス・ヒンデル(設計)、コンクリート工業(施工)
●工法・構造
コンクリート造基礎、木造2階建、金網張・珪砂入化粧漆喰仕上、5層塔屋付(双塔)
●様式
ロマネスク・ルネサンス・リヴァイヴァル
●教派
ローマ・カトリック教会