語句解説①ロマネスク / ロマネスク・リヴァイヴァル

ロマネスク

建築学参考図刊行委員会 編(1931)『西洋建築史参考図集』東京:建築学会 より、ロマネスク(ドイツ、ヴォルムス大聖堂 断面図)

 宗教改革が起こる以前のキリスト教(ローマ・カトリック教会)を基盤とし、11世紀~12世紀前半にヨーロッパ各地に広まった西洋中世の建築・美術様式を指します。フランス、イタリアが中心となり、ドイツ、スペイン、イギリスでも発展を遂げました。イギリスの建築様式はノルマン(アングロ・ノルマン)と呼びます。
 教会建築は、内陣、翼廊、身廊で構成される十字架形平面(バシリカ)、切石積の工法・構造、高いヴォールト天井が確立され、半円アーチの多用、素朴な図案・表現の石彫装飾を特徴とします。聖堂の東端部(ヨーロッパから見てエルサレムの方向)に内陣を置き、玄関のある西側を記念碑的な多層構造とし、塔屋(多くは双塔)が築かれるようになったのもロマネスクです。内部空間は全般的に静謐で重厚感が溢れます。

[左]建築学参考図刊行委員会 編(1931)『西洋建築史参考図集』東京:建築学会 より、ロマネスク(フランス、アングレーム大聖堂 レリーフ装飾)[右]宇都宮天主公教会二代聖堂(現・カトリック松が峰教会聖堂)地下玄関の年記 2018年撮影 撮影:church2023.jp

ロマネスク・リヴァイヴァル

 復興様式としては、ドイツのルントボーゲンシュティル(19世紀前半)、イギリスのノルマン・リヴァイヴァル(同)、アメリカのロマネスク・リヴァイヴァル(19世紀後半~20世紀初頭)が挙げられ、城館、学校、駅舎など世俗の建造物でも採用されました。
 マックス・ヒンデルの教会建築は、ロマネスクを基調とするものが多いですが、純然たる復興様式というよりは、日本の風土に合致させ、近代工法も採用し、自身の建築思想に則るスタイルを呈します。

[左]建築学参考図刊行委員会 編(1931)『西洋建築史参考図集』東京:建築学会 より、ロマネスク(フランス、サン=トロフィーム教会聖堂 柱頭)[右]宇都宮天主公教会二代聖堂(現・カトリック松が峰教会聖堂)内部円柱の方円柱頭 2022年撮影 撮影:church2023.jp

学びを深めるための参考文献

Léon, Paul. (1915) Encyclopedie des styles: première série, l’art Roman. Paris: R. Ducher.

Fletcher, Banister; Fletcher, Banister Flight. (1921) A History of Architecture on the Comparative Method: For Students, Craftsmen, and Amateurs. (6th edition) London: B.T. Batsford.

宇都宮天主公教会二代聖堂(現・カトリック松が峰教会聖堂)東立面図 1979年実測 実測・画像提供:角 幸博 氏(北海道大学名誉教授、歴史的地域資産研究機構代表理事)