ゴシック
ロマネスクに続き、12世紀後半~15世紀にヨーロッパを席巻した西洋中世の建築・美術様式がゴシックです。フランス、ドイツで発展し、イギリスは独自の展開が見られます。
あらゆる造形芸術のなかで建築が最高位に置かれ、石造の大聖堂の造営技術、意匠が高度なかたちで完成されました。リブ・ヴォールトの発達で天井はいっそう高くなり、構造的な意味合いを持つ何段もの控え壁、尖頭アーチ、高い壁を彩るステンドグラスに特徴づけられます。垂直性の強調は、細長い塔屋(多くは尖塔)、窓の形状を生み出しました。
イギリスの場合、15世紀末~17世紀初頭のチューダー様式に地域色と、次の時代への予兆が感じられます。城郭に倣う宮殿や邸宅、木骨・半木骨造の民家の造り、煉瓦の導入、これに伴う四心尖頭アーチの登場は、後年の教会建築に影響を及ぼします。
ゴシック・リヴァイヴァル
教会建築の理想とされ、世俗の建造物にも影響を与えたゴシックの復興は、イギリスにおけるゴシック・リヴァイヴァルとして花開き(18世紀後半~19世紀)、アメリカでも盛行しました(19世紀後半~20世紀初頭)。フランスの場合、建造物の文化財修復という観点でゴシックに近代の眼差しが注がれますが、復興様式の昂揚は不完全なまま20世紀を迎えます。
上林敬吉を始めとする聖公会の教会建築は、ゴシックを基調とするものが多いですが、イギリスとアメリカの復興様式をベースに、日米または日英の聖公会の意向を反映させるかたちで、個々の建築家がそれぞれの解釈を試みたスタイルを呈します。
学びを深めるための参考文献
Léon, Paul. (1915) Encyclopedie des styles: première série, l’art Roman. Paris: R. Ducher.
Fletcher, Banister; Fletcher, Banister Flight. (1921) A History of Architecture on the Comparative Method: For Students, Craftsmen, and Amateurs. (6th edition) London: B.T. Batsford.