ジョン・ヴァン・ウィー・バーガミニ（1887～1975）
John van Wie BERGAMINI

　1887年8月12日、アメリカのアセンズに生まれたジョン・ヴァン・ウィー・バーガミニは、コロンビア大学で建築を学び、母国の四つの建築設計事務所を経て、1914～1919年の間、アメリカン・ボード（アメリカの超教派プロテスタント外国伝道組織）のミッション・アーキテクト（宣教建築家）として中国に滞在します。以降、1920～1955年の長きにわたり、米国聖公会伝道局に身を置きました。

［下図］1927年（昭和2）に東京の青山で聖別された聖三一教会二代礼拝堂は、バーガミニの設計によります。東京大空襲（1945年）で失われ、その後、青山通りの道路拡張に伴い、教会は世田谷区代沢に移りました。

　この間、関東大震災後の日本聖公会の施設復興という使命を帯びて来日し、東京の聖三一教会（現・日本聖公会 東京聖三一教会）二代礼拝堂（単独設計）、浅草聖ヨハネ教会（現・日本聖公会 浅草聖ヨハネ教会）三代礼拝堂（上林敬吉との協働設計）など多くの建造物を手がけます。東京教区で重要な前者が1927年（昭和2）10月に聖別され、やはり米国聖公会ミッション・アーキテクトのジェームズ・マクドナルド・ガーディナーが1925年（大正14）11月に亡くなり、上林が独立したことに鑑みて、バーガミニの来日は1925年（大正14）と考えて間違いありません。

　ガーディナーとは異なり、バーガミニは東京に事務所を持たず、連絡先（兼居住地）を「東京府下池袋」（立教学院校宅）とし、上林敬吉との協働設計においては、上林の腕と事務所が多くの案件の同時進行、現場監理に供しました。

［下図］「東京府下 池袋 J・V・W・バーガミニ」とタイピングされています。この住所は立教学院を指し、バーガミニはその校宅の一つに住んでいました。

　聖路加国際病院のように業務が長期にわたり、規模が大きい建造物の場合、監理現場を仕事場に充てています。1929年（昭和4）にバーガミニは、建築家のアントニン・レーモンドとロバート・D・コーン、ノーマン・スペンサー・ビンステッド日本聖公会東北地方部主教の推薦を受け、アメリカ建築家協会（AIA）会員となりますが、レーモンドが聖路加国際病院の基本構想者、コーンはアメリカ時代の元上司、ビンステッド主教が日米の聖公会の重鎮だった点で興味が尽きません。というのも聖路加国際病院をめぐっては、米国聖公会とそりが合わなかったレーモンドが初期段階で手を引き（1928年）、これを引き継いだのがバーガミニで、戦後における完成に尽力したのは、後年に同病院の営繕課長となる信徒建築家の上林敬吉だからです。

［下図］「東京 築地 聖路加国際病院 J・ヴァン・ウィー・バーガミニ 東京在建築家 チャールズ・バトラー＆ロバート・D・コーン建築設計事務所帰属」というスタンプが押されています。

　時局の悪化に伴い、1938年（昭和13）にバーガミニは離日しました。第二次世界大戦中は日本占領下フィリピンのルソンで日本軍の収容所に幽囚され、終戦とともに米軍に救出されます。そして1975年（昭和50）1月15日、アメリカのロウェイトンで逝去しました。

［下図］離日の前年、バーガミニは日本における聖公会の教会建築に関するエッセイを米国聖公会の広報誌に寄せました。

　上林敬吉と協働した礼拝堂群、及びバーガミニの単独設計による教会・学校・病院建築については、本サイトの「建造物めぐり」で順次取り上げていく予定です。

学びを深めるための参考文献

これまでバーガミニの生涯や業績については、詳しい調査が成されてきませんでした。よって本展の図録（記念出版）が最良の参考文献となります。