カトリック松が峰教会聖堂の建築について

1932年(昭和7)に竣工したカトリック松が峰教会聖堂は、鉄筋コンクリート造・大谷石張りという「近代工法×地域固有の建築素材」による建物です。同じ頃に建てられた「旧・宇都宮商工会議所」(1928年、玄関部分のみ移築・保存。設計=安 美賀)、「旧・大谷公会堂」(1929年、現存。設計=更田時蔵)、「南宇都宮駅」(1932年、現存。設計=東武鉄道)、「日本聖公会 宇都宮聖ヨハネ教会」(1933年、現存。設計=上林敬吉)とともに、大谷石産業の隆盛、これに刺激を受けて花開いたモダン宇都宮の都市・建築文化を語るうえで欠かせない建築のひとつ、として良いでしょう。
様式としては、ヨーロッパの中世に相当する「ロマネスク」(11~13世紀)の空間づくり、建築意匠を踏まえており、人々を迎える正面玄関は建物東端の二階中央に置かれ、半円形の端正なロマネスク・アーチで囲まれています。丸いアーチは開口部や外壁装飾の随所に見られ、聖堂内部にも繰り返し現れます。そして、玄関の左右には四層の堂々たる塔屋が聳えています。
このように、東から西に向かって「正面玄関-主祭壇-内陣(その奥の聖域)」を結ぶ軸線がエレサレムを示すこと(ヨーロッパの場合は西から東)、正面性を強調する塔屋の存在感、アーチのかたちなど、ロマネスク建築の特徴的なディテールは、いずれも「近代工法×地域固有の建築素材」で実現されました。何故ならば、安価で手に入りやすいとは言え、建材としては軟らかい大谷石を用い、大規模かつ階高のある建物を地震の多い国で造るには、躯体を鉄筋コンクリートとし、石の型枠をそのまま残す、もしくは外壁を石で覆うのが望ましいからです。この考え方は、関東大震災(1923年)に耐えたフランク・ロイド・ライトの「旧・帝国ホテル ライト館」で実証された通りです。また、大谷石は、複雑な彫刻的表現こそ困難ですが、簡素で素朴なレリーフには向いており、異なる表面仕上げの石と組み合わせ、さまざまなパーツを外壁に張るならば、教会建築に相応しい中世風の様式美が可能となります。
以上を念頭に、設計者のマックス・ヒンデル(1887~1963年)は、宇都宮天主公教会(設立1888年、於・宇都宮市川向町。1895年、松が峰の地に移る)を拓いたイッポリト=ルイ=オーギュスト・カディヤック神父(1859~1930年)の情熱に応え、「石の街うつのみや」に見事な「ロマネスクの華」を咲かせました。

カトリック松が峰教会聖堂 東側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面) [図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年 [制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 東側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面)
[図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年
[制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 西側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面) [図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年 [制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 西側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面)
[図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年
[制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 北側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面) [図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年 [制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 北側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面)
[図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年
[制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 南側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面) [図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年 [制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art
カトリック松が峰教会聖堂 南側立面図(展示用模型制作のためのスタディ図面)
[図面制作] 模型工房「さいとう」|2016年
[制作監修] 大谷石研究会+宇都宮美術館 (C)Utsunomiya Museum of Art