さと歩きワークショップ+地理・地質と石のお話3

「先行関連事業」の初回となる「さと歩きワークショップ《石の里・大谷を探訪する》」

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に関連した「地理・地質と石のお話」の続きです。

とっておきの絶景
今日は皆さんを、「石の里」でも「とっておきの場所」へご案内しましょう。それは、よく知られた「奇岩」や「地下採石場跡」ではなく――
岩場の足元に顔を覗かせる吸い込まれそうな絶壁!

石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町 撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム (C)Utsunomiya Museum of Art
石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町
撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム
(C)Utsunomiya Museum of Art

そして、岩場をよじ登ると突如として出くわす怪奇に満ちた洞窟!

石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町 撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム (C)Utsunomiya Museum of Art
石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町
撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム
(C)Utsunomiya Museum of Art

どちらも大谷では珍しくない!ものですが、一般の人々がじっくりと巡検することは余りありません。崩れやすく危険だからでしょうか。それとも、観光マップには記されていない秘境の場だからでしょうか。

穴場めぐり
「崩れやすい」のは確かで、「秘境」と言えば間違ってはいませんが――
種明かしをすると、二番目の「洞窟」は、実はこのようなスケールのものです。

石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町 撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム (C)Utsunomiya Museum of Art
石切場跡にて|2016年|宇都宮市新里町
撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム
(C)Utsunomiya Museum of Art

調査・撮影のために用いるカラー・パッチは、横が205mmですので、「穴」の大きさは一目瞭然です。しかし、同じ「穴」でも、こちらをご覧いただくと、やはり「石の里」は秘境だらけだということが納得できるのではないでしょうか。

御止山南側の自然石|2016年|宇都宮市大谷町 撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム (C)Utsunomiya Museum of Art
御止山南側の自然石|2016年|宇都宮市大谷町
撮影=宇都宮美術館「石の街うつのみや」展 調査・撮影チーム
(C)Utsunomiya Museum of Art

「穴」はぐっと大きく、これが断崖一面に広がっています。全体を写すと、カラー・パッチが見えなくなるほどのスケール感のため、ここでは部分をご紹介しています。

ミソに迫る
極めつけは、大谷を代表する「穴だらけの岩山」(自然石)のふところに抱かれた「天開山 大谷寺」。堂宇が岩にめり込むように築かれており、中には本尊の石仏・千手観音がまつられています。

天開山 大谷寺 本堂|2015年|宇都宮市大谷町 撮影=大洲大作 (C)Daisaku Oozu
天開山 大谷寺 本堂|2015年|宇都宮市大谷町
撮影=大洲大作
(C)Daisaku Oozu

このミクロとマクロの不思議な「穴」は――
大谷石の最大の特徴である「ミソ」が抜け落ちた跡です。「ミソ」が何であるかは、地質学者に伺っても諸説あるそうで、一つの有力な説は「水中に噴出した軽石流に巻き込まれた “鉱物・岩石など” が、軽石流が長い年月をかけて固まり、凝灰岩となっていく過程で “さまざまに変化した” もの」と言われています。軽石流が非常な大量で、水中から陸地まで一気に押し寄せたため、水中・陸地の鉱物や岩石があっという間に巻き込まれ、よって「ミソ」は多様な様相を示します。軽石流の流れ方によっても、「ミソ」は千差万別ですが、一言で表すと「青白い大谷石の中に見られる茶色っぽい斑のような部分」です。

岩石標本「大谷石」|平成時代|宇都宮市大谷町産 国立科学博物館蔵 (C)National Museum of Nature and Science,Tokyo
岩石標本「大谷石」(部分)|平成時代|宇都宮市大谷町産
国立科学博物館蔵
(C)National Museum of Nature and Science,Tokyo

とがったものでつつくと、ぽろぽろと落ち、風化が進んだ石の場合、自然に「穴」を呈します。

前回は、壮大な「大谷層」のお話を記しましたが、ここで触れた「穴」「ミソ」の石たちは、「II層」と「IV層」に相当するものです。