宇都宮聖約翰教会礼拝堂
※「約翰」は「ヨハネ」と読みます
●今日の名称(所在地)
日本聖公会 宇都宮聖ヨハネ教会礼拝堂(栃木県宇都宮市桜)
●年代
聖別1933年(昭和8)
●設計・施工者
上林敬吉(設計)、坪谷熊平(施工)
●工法・構造
鉄筋コンクリート造平屋建、大谷石張、3層塔屋付
●様式
モダン・アングリカン
●教派
聖公会
この礼拝堂の見どころは、イギリスに由来するさまざまな時代の建築言語を、近代工法と合致するものに置き替えたこと、及び大谷石の採用により、中世の簡素な石造教会を偲ばせる趣を創出したところにあります。
内陣は建物の南西に置かれ、北西翼廊がオルガン空間を成し、その内陣寄り(南西)に礼拝準備室を設けています。内陣と向き合う身廊は単廊式で、建物の南東側面、北東寄りに玄関間とポーチを兼ねる塔屋が突き出し、北東端部には小礼拝堂が位置します。
南東翼廊に相当する部分がないため、物理的な意味での十字架形平面(バシリカ)ではありませんが、内陣と身廊から成る長方形平面の随所に礼拝準備室や塔屋を付す構成は、上林敬吉が手がけた他の礼拝堂でも見られます。その位置関係にはヴァリエーションがあるものの、礼拝準備室はおおむね内陣に向かって右、玄関は必ず身廊の最後部に人々を導くよう配されました。
塔屋の頂部に低い胸壁を付すのはノルマン(11世紀)、その四隅や外壁の随所に水切りを付した控え壁を設え、開口部を尖頭アーチか、細長い矩形とするのはゴシック(12世紀後半~15世紀)に源泉があるディテールです。切妻屋根をシザーズ・トラスで支え、それを内部に露出させることや、トラスの下弦材のかたち(四心尖頭アーチ)、同じ形状を用いた内部空間の分節は、チューダー(15世紀末~17世紀初頭)に由来しています。
☞続編「ディテールと石づかい」は建造物めぐり③、続々編「礼拝堂の記憶」は建造物めぐり⑭をご覧ください