宇都宮天主公教会二代聖堂(現・カトリック松が峰教会聖堂)
本聖堂における大谷石の使い方は、ロマネスクの大聖堂や修道院が湛える石積(組積造)の建造物の永続性と、素朴で象徴的なレリーフ表現を示唆するものです。石積風のディテールは、自然石のような粗い仕上げ、あるいは平滑な表面の石を鉄筋コンクリート造の躯体に張って組積造を模し、重厚で壮大なスケール感が実現されました。
レリーフ表現については、小アーチが連続する外壁のロンバルド帯(帯状のレリーフ)、ポーチの半円アーチを彩る幾何学文様の石タイル、内部の円柱に付した組紐文様の方円柱頭(ブロック状の柱頭)などが眼を引き、この聖堂がロマネスクを基調とすることを表しています。
☞前編「聖堂の概要と見どころ」は建造物めぐり①、続々編「聖堂の記憶」は建造物めぐり⑬をご覧ください
宇都宮聖約翰教会礼拝堂(現・日本聖公会 宇都宮聖ヨハネ教会礼拝堂)
※「約翰」は「ヨハネ」と読みます
イギリス由来のさまざまなディテールの融合と、それを標準化し、かつ建物ごとにカスタマイズする手法、そのスタイルは、本礼拝堂を始め、上林敬吉が携わった聖公会の礼拝堂群に共通して見られます。内部はいずれも漆喰塗装、一部木製装飾パネル張ですが、この礼拝堂の場合、外壁をモルタル仕上ではなく、大谷石張とした点が特筆されます。そして、材の風合いを活かし、装飾を排した石づかいをしています。
既存の仮礼拝堂兼園舎(現・愛隣幼稚園大谷石園舎)との調和を考え、コンクリートと組み合わせることで、より永続性を発揮する「石」を訴求する表現としてよいでしょう。
☞前編「礼拝堂の概要と見どころ」は建造物めぐり②、続々編「礼拝堂の記憶」は建造物めぐり⑭をご覧ください