作品解説倶楽部ではコレクション展でのギャラリートークのほかに、学校団体の申し出に応じて行う「スクールガイド」を担当しています。ここでは、少人数のグループに分け作品解説倶楽部のメンバーがナビゲーターとして1名つき「対話型鑑賞」によって進行していきます。展示室でお話しして大丈夫?と思った人はいませんか。でも、これは子供たちが自由に感じたこと、考えたことを話し合いながら、楽しく鑑賞していくプログラムなのです。
対話を通して「話を聞く力」を身に付け、作品の見方も広まります。
それでは宇都宮美術館所蔵の名品、高橋由一(1828~94年)の《中州月夜の図》(1878年)を見ながら会話を少し紹介致します。
《中州月夜の図》 高橋由一 1878年 |
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「まず、どこに目がいくかな?」 | |
「月!次に水面かな?」 | |
「だんだん目が慣れていくと星も見えてくるよ。」 | |
「どこどこ?」 | |
「この作品はいつの時代だと思う?」 | |
「電気のない時代。だって、街灯が描かれていないでしょう。だからきっと明治時代だと思う。」 | |
「舟に乗っている人はどんな人かな?」 | |
「漁師さん!魚を釣っているように見えるよ。」 | |
「恋人どうし!」 | |
「どうして?3人いるじゃない?」 | |
「1人は船頭さん。2人が恋人だよ。」 | |
「そうか!」 と、会話は続いて行きます。 |
同じ質問を大人の方にしてみたところ、「月見をしている。」のほかに、夜逃げ、駆け落ち説など様々でした。また、「月に雲が薄くかかっていることで一層光を感じる。絵から光を放っているようだ。」「水面に映る光によって水の音を感じる。」などの感想も頂きました。
月の光の下、逆光の構図によるぼんやりと浮かぶ人影が、観る人の想像を刺激し、作品との対話が始まっていきます。
ある小学生のグループに「高橋由一は江戸時代に生まれて、40才までは武士だったんだよ。」と説明したら、「じゃあ、西郷隆盛みたいだね。」と言われました。調べると西郷隆盛(文政10・1828~1877年)と由一は同年で、この作品の制作年は西南戦争(1877年)の翌年なのでした。
私たちの活動は作品と鑑賞者をつなぐだけではなく、私たち自身が対話を通して学んでいます。美術に関心のある方!私たちと一緒に活動してみませんか?文字情報からの知識だけではなく鑑賞者の生の言葉によって視野が大きく開かれます。
興味あるけど自信ないな!?と、思っている人もいますよね。それでしたら、まずギャラリートークを聴くことをお勧めします。最初の一歩はまず参加することから。私たちはいつでもお待ちしています。
尚、作品解説倶楽部募集については、宇都宮美術館(tel. 028-643-0100)までお尋ねください。