平成26年3月8日と22日、両日午後2時から《MR10》と《赤と青の椅子》についてのワークショップが行われました。具体的には、展示作品を鑑賞し(1.みる)、復元モデルに座り(2.すわる)、模型を組み立ててみる(3.つくる)というものです(現在は展示替えされています)。 県内外からご応募いただき、3月8日は8名、22日は11名の方にご参加いただきました。 田澤学芸員と作品解説倶楽部メンバーが企画運営を行い、参加者のみなさんと一緒に名作椅子の秘密を探ってみました。
展示室に移動し、さまざまなオリジナルの作品について解説を聞き、鑑賞していただきました。
長さ約4メートルの金属パイプを曲げて、カンティレバー(片持ち構造)で出来ています。 金属の強度、曲がり具合、座る人の重さ、姿勢などを計算し、そのバランスを考えたうえで美しい形に仕上げています。まるでソリを思わせるような形で、座面は革製で下から見ると左右に小さな穴があり、紐でしばり固定されています。 この椅子をデザインしたのは、ドイツ生まれの建築家ミース・ファン・デル・ローエ(1886~1969)です。彼はドイツの造形学校バウハウス(1919〜1933)の校長をつとめました(1930〜1933)。 バウハウスは、形がシンプル、丈夫で使いやすい、大量生産が可能、作家の一点ものに比べ手に入れやすい値段で買うことができる、このような機能主義の作品づくりを目指しました。現在簡素なパイプ椅子は体育館や会議室で見られますが、その源流へさかのぼるとこの学校にたどり着きます。
ミース・ファン・デル・ローエ 《MR10》 1927年(本作品は1931年の製造) 宇都宮美術館蔵 |
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13本の四角い棒と4枚の板を「だぼ(太い木釘)」でつないで組み立てることができます。背板は赤、座面が青、ひじ掛けや椅子を支える前脚・貫などの棒は黒で塗られ、その切り口には黄色がアクセント的に使われています。通称「Red&umoa_green」にふさわしくインパクトのある色彩で、1918年にデザインされておよそ100年近くたつ現在でも人々を魅了しつづけています。 この椅子のデザイナーはオランダ生まれの家具職人ヘリット・トーマス・リートフェルト(1888~1964)です。モダニズム(近代主義)の時代にふさわしい生活をめざして、簡素で使いやすい手づくり家具をいくつも考えました。のちに建築家としても活躍し、オランダ・ユトレヒトのシュロイダー邸は世界遺産に認定されています。
ヘリット・トーマス・リートフェルト 《赤と青の椅子》 1918年(本作品は1935年の制作) 宇都宮美術館蔵 |
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宇都宮美術館で所蔵する《MR10》(1931年製)、《赤と青の椅子》(1935年製)はオリジナル作品で座ることはできませんので、復刻作品の座りごこちを体感していただきました。
縮尺2分の1の大きさの模型「deli」を使い、2つのグループに分かれて組み立てていただきました。(「deli」とは、デザイン作品を身近に親しんでいただくために製作された宇都宮美術館のオリジナル教材です。デザインキット(模型)とワークシート&テキストが含まれます。今回はデザインキットのみを使用しました)
最後に、解説倶楽部スタッフがナビゲーターとなり、参加者の皆さんのご感想をお聞かせいただきました。図書コーナーの一角でサークル状になり、和やかな雰囲気で会話が弾みました。以下はそのときの会話です。
ナビゲーター:復刻作品への座りごこちはいかがでしたか?
参加者Aさん:《MR10》は片持ち構造で、座面の裏側が紐でしばってあるためか、腰をおろしたときに少し身体がしずむ気がする。その感覚がおもしろい。背面によりかかると、見た目よりも安定感がある。
参加者Bさん:《赤と青の椅子》は素材が板だけれど意外に座りやすかった。背板の角度や座面の高さがちょうど良く、長時間座っていても心地よいと思う。読書をしたり、もの思いにふけりながら景色を眺めていたい気持ちになる。
ナビゲーター:模型を組み立てて感じたことはありますか?
参加者Cさん:《MR10》は1本のパイプをまげて作品と同じ形にするのが大変だった。左右のバランスをとるのが難しい。模型なので他に違った形を試すことができて楽しい。
参加者Dさん:《赤と青の椅子》のパーツを組み合わせるのが難しかった。想像以上に時間がかかってしまった。部品の数や、座面と背板との角度など、精巧に作られていると感じた。
そのほか、「自宅にお持ち帰りできたら、どちらの椅子を置きたいですか?」というナビゲーターからの質問に大半の皆さんが、《赤と青の椅子》を選ばれていました。窓越しにリラックスしながら座って過ごしたいというご感想もいただきました。
参加された皆さま、ご協力ありがとうございました。またのご来館をお待ち申し上げます。